『ノストラダムス 戦慄の啓示』にツッコミ!

書 名  ノストラダムスの戦慄の啓示
著 者  大川隆法
出版社  幸福の科学出版
価 格  800円(※絶版)
 出版年月  1991年2月

●本書概要

 教祖様が予言者として名高いノストラダムスの霊を降霊し、その霊が語った予言をまとめたもの。


●ツッコミ

 本書によると、教祖様がノストラダムスを降霊し、未来の予言をさせたのは1991年1月11日のこと。

 19年以上経った現在(※2010年11月)、その予言を検証してみると外れっぷりがものの見事で、自称「救世主」、自称「釈迦の生まれ変わり」、自称「人類史上最高の悟りを得た者」である教祖様の霊能力の質・レベルを知る上で格好の素材となっている。

 本書の予言の外れっぷりは以下の通り。
 アジアではフィリピンという国が大地震で、打ち続く大地震で、国が大きく滅びていくであろう。
東南アジアのミャンマーという国にも、ベトナムという国にも大地震は襲う。多くの餓死者が出るであろう。瓦礫の下になって死ぬ人も出るであろう。
 フィリピン、ミャンマー、ベトナム、大地震で死ぬは、もうすぐそこまで来ている。
このうちのどれか一つの国に、この次に大地震が起きたならば、残りの国にも続いて起きる。

(P.112-113)
 東南アジア付近の大地震と言えば、2004年12月に起きたマグニチュード9.3のスマトラ沖大地震が記憶に新しい。この時の被害地域としてはミャンマーも含まれ、APF通信によれば死者は少なくとも90人だった。
 しかし、現在まで、予言された国に該当の大地震と言えるものは起きていない。これから起きるということであろうか。
 十一億の中国の民は、三億人にまで人口を減らす。八億は死ぬ。
いかなる死に方をするか、それをあなたがたに選ぶ自由はない。戦乱によって、もちろんそれもある。あなたがたが来世紀の、世界の騒乱の主役になるからだ。だから戦乱によって、殺しも殺されもするだろう。しかし、神はかなりの天変地異をあなたがたに賜るであろう。(P. 114)

 しかし、恐ろしいのは戦争ではなく、戦乱のときに流行る新たな病である。(P. 116)
 戦乱と天変地異、及び、新たな病で中国人の八億は死ぬらしい。現時点では起きていない。
 戦乱は何ゆえに起きるか。それは経済的な行き詰まりが、まず、その原因をつくることになるだろう。
 中国は飢えている。飢えた中国は、食糧を求めて、あちらにこちらにと兵を送る。見よ、中国兵がソビエトに襲いかかるのが見える。(P. 118-119)
 中国は経済的に行き詰って、ソビエトに侵攻するらしい。
 自由経済を取り入れて経済発展を遂げる中国の姿は視えなかったようだ。今や、中国の成長市場は世界経済のけん引役とも言われている。(いつ経済バブルが崩壊してもおかしくないとは言われているが)
 これからの十年、二十年の間に、考えられる限りの禍が起きる。しかし、主としてこれからの十年こそが、あなたがたの最大の悲劇となるであろう。(P. 122)
 この予言がなされたのは1991年1月であるから、十年後は2001年1月、二十年後は2011年1月になる。
 そして、「主としてこれからの十年こそが」とあるから、本書に予言されたことが起こるのは2001年までがメインということになる。
 もちろん、予言されたことなど何も起きていない。また、現在、2010年11月だから、残り数か月である。
 一九九九年をもって、全人類は、もはや破局を迎えたかのごとき状況に陥ることになる。その前にも世界大戦もあり、核戦争もあり、大規模の病気も、流行病もあり、天変地異もあり、津波、その他さまざまなことがあり、場合によっては宇宙人の飛来等もある。(P.151)
 全くの大ハズレ。
  我語りしがごとく、海の怪獣リヴァイアサンとはこの日本のことなり。(P. 139)

 二一世紀、リヴァイアサンは無敵となるであろう。年老いた鷲の喉を食いちぎり、また、力尽きた赤い熊を打ち倒し、老いたるヨーロッパを嘲笑い、中国を奴隷とし、朝鮮を端女(はしため)とするであろう。
(P. 159)
(※鷲→アメリカ、熊→ソ連(管理人注))

 一九九二年は、世界はまだ戦乱のなかにある。日本はこの年から、その国是を変え始め、軍事大国への道に向かって、世論は移ってくるであろう。そして、具体的に憲法改正、あるいは、その実質的改正ともいえる、他国をも攻撃しうるような、そういう軍隊を持てるという解釈を、方針を出すのが一九九四年。
 時の内閣は、もと防衛庁に関わった者を総理大臣として頂いているであろう。このとき、彼のときに、日本は決定的なる軍事大国への道を歩むことになる。
(P. 164-165)

 一九九二年より、日本の軍国主義化が始まり、九四年に、それは決定的なものとなる。
(P. 166)
 具体的な年を示しての予言である。日本の軍国主義化など起きていない。
  さらに、それに輪をかける朝鮮の大混乱。南北統一をめぐっての紛争、場合によっては武力衝突、これがある。
 それは、具体的な年月日を予測することは難しいが、現実に南北朝鮮の大きな問題がクローズアップされてくるのは、一九九二年からの三年の頃。そして、これが本格的に十分な統一状態になるかどうかは、暫し予断を許さぬ状況が続くであろう。
(P.168-169)
 1992年からの3年間に朝鮮で南北統一をめぐって紛争、または、武力衝突があるそうだ。これもハズレ。
  この朝鮮半島は動乱に乗じて、また、日本に、経済的に、いやある意味においては、軍事的にも牛耳られるようになっていく。アメリカの後退とともにそういうことが起きてくる。
また、それは朝鮮半島に止まることなく、さらにシベリア、ソ連のシベリア地区に及ぶことになる。
 ソ連はまもなく分裂国家となるが、このシベリアの地区は、経済的な発展を望んでいるので、日本との緊密なる関係を持とうとする。
(P.171-172)
 「ソ連はまもなく分裂国家となる」だけ当たっている。
 ただし、この予言がなされた当時、ソ連の指導者はゴルバチョフが大統領であり、また、ソ連国内の民族主義の台頭が伝えられていたから、予言というより単なる予測の範囲内だと言えるだろう。
 ちなみに、1991年8月にクーデターが起きてソ連は解体、終焉を迎えることになった。
  この国(※中国のこと(管理人注))もまた二十一世紀において、再び日本の植民地下に置かれることになる。かつてと全く同じとは言わぬ。しかし、事実上はそのようになる。この中国の政治は、日本の政治の傀儡政権となる。(P.175)

 この日本の植民地的なる支配は、東南アジアに及ぶ。ベトナム、ミャンマー、タイ、こうした国々は、やがて日本の軍門下に下ることになる。それは歴史的な必然となる。
(P.176)
 そもそも、日本の軍事主義化が外れているのだから、日本による他国の植民地化は当たりようがない。
 しかし、「歴史的な必然となる」とまで言い切っている。
 そう、ビヒモス(※イラクのこと(管理人注))は血を流しながら、まだ生きのびている。だが、この中東にできる巨大なアラブの国家は、もう一度、最期の死闘をせねばならぬ。
 いったい、どの国と死闘するというのか。そう、あのイスラエルという国と。アラブとイスラエルは、最後の決戦を必ず行うようになる。今世紀中にも何度かあるが、最後の決戦は、西暦の二〇一〇年から二〇年の間に行われるであろう。この結果、イスラエルという国は、地上から姿を消すことになる。
 もし、ビヒモスの流す血が少なく、その体の回復がもっと早ければ、イスラエルという国が、地上から消えるのはもっと早くなり、西暦二〇〇〇年の初めとなろう。
(P.179-180)

 そして、アラビア半島に、巨大なアラブの共和国ができあがる。いや、帝国と言ったほうがよいであろう。アラブの帝国ができあがる。
 これがアラブの悲願であり、この悲願は、これより二十年ないし三十年以内に成就することになる。
(P.181)
 予言がなされた頃、イラクは1990年8月にクウェートに侵攻、1991年1月に多国籍軍が空爆を開始した。
 このイラクが2010年から20年の間にイスラエルを滅ぼすようだが、このことを「もう一度、最期の死闘」と表現し、その次の死闘であることを示唆している。残念ながら、アメリカが2003年3月にイラクに侵攻し、フセイン政権を打倒することは視えなかったようだ。
 もはや、イラクにイスラエルと戦争したり、アラブの帝国を作ったりする力など無いことは明らかであろう。

 ちなみに、本書の別の箇所では、1991年の湾岸戦争によりアメリカは致命的なダメージを受け、没落が始っていくと語られている。



 以上、予言内容は全てと言っていいほど外れている。なかなかに酷い内容である。

 該当書籍は既に絶版になっているが、とても発行し続けられる内容ではないので当然であろう。(※ただし、古本では大量に出回っているようなので、アマゾン等で容易に手に入れることができる)


 また、上の予言内容は、当時の時代背景を勘案して読めば、よりよく理解できるであろう。未来を視ることのできる霊が語ったというより、単に「その時代に生きていた著者自身が未来を予測した」と言った方がふさわしい内容である。

 この予言がなされた1991年と言えば、日本はバブルの真っただ中で日本企業は高価な美術品や海外の土地を買い漁っていた。おそらく、教祖様は、この日本の繁栄がバブルであることに気づかずに、そのまま続き、さらに日本が増長していくと考えていたのであろう。そして、その延長として、日本の軍国主義化や他国の植民地化がなされると予想したのだと思われる。

 また、当時は、ノストラダムスの1999年の予言で世界の終りが訪れると騒がれていた時でもあった。上の予言では、その影響を受けてであろう。1999年の破局が語られている。1990年7月にフィリピンでM7.8という大地震(バギオ大地震)が起きているが、それに世界の破滅の前兆を感じ、それが元となって、フィリピンがさらなる大地震で滅んでいくという予言が出てきたのかも知れない。

 そして、1991年は上でも述べた通り、湾岸戦争が起こった年でもある。当時は、イラクはクウェートに侵攻するほど血気盛んであったから、イスラエルを滅亡させることや、アラブ帝国の成立も、その延長で予想したのだと考えれば納得がいく。


 結局、その予想は全てハズレ。時代背景に影響され、人間の想像のレベルを全く出ていないことが分かる。


 なお、「これはノストラダムスが勝手に予言したことだから、教祖様の考えとは関係ない」と主張する人がいるかも知れないが、教祖様は本書のあとがきで次のように述べている。
 ノストラダムスの予言は、おそらく的中率は、七割から八割を越えるのではないかと推定している。(P.192)
 教祖様自らも、上の大ハズレの予言が七、八割以上当たると言っているのである。
 教祖様の霊能力の質・レベルが知れると言うものだ。




2010.11.15新規

絶版にして無かったことにしてないで、きちんと現実を見つめた方がいいゾ。