インチキ占い師・霊能者の手口(その4)

 ※当記事は(その1)(その2)(その3)からの続き。



4.コールド・リーディング(2)

(1).誰にでも当てはまる事柄

 「コールド・リーディング」の手法を使った別の例を見てみたい。

 なお、こちらは、相手との会話によって、相手に「視えてる」と思わせるテクニックであるが、(その3)のように読心術によって相手の心を読み取るわけではない。(ただし、相手の反応は見るが)

 まずは、以下に会話の具体例を記載する。

 登場するのは自称霊能者と依頼人で、依頼人は友人にすごい霊能者がいると言われ、勧められるまま興味本位で会ってみたという程度である。また、依頼人は東京都23区に住む女性で3歳と6歳の子供がおり、このことは自称霊能者も知っていて、かつ、依頼人も知られていることを認識している。
※会話の前に付いている(霊)は霊能者、(依)は依頼人。


依頼人が鑑定室に通されたとたん、霊能者は顔をしかめ、次のように告げた。

(霊)「あなた、あまり良くない霊が憑いているわね。」

会っていきなり、そのようなことを言われて戸惑う依頼人。依頼人は、友人から「すごい霊能者だ」と聞かされてはいたが、まだ半信半疑である。そのようなことを突然言われ、信じたくない気持も大きい。
霊能者は目を細めて霊視を行っているようで、さらに、次のように言った。

(霊)「あなた、お子さんが交通事故にあいそうになったことない?」

(依)「あ、あります!」

依頼人は、つい先日、子供が道路に飛び出し、あやうく車にひかれそうになって冷や汗をかいたことを思い出した。

(霊)「そうでしょうねぇ。あなたに取り憑いている霊が悪さをしているわ。」

(依)「そうなんですか!?」

(霊)「そうよ。」

霊能者はそう答えて、また霊視をしているようであった。

(霊)「公園が見えるわ・・・家の近くに公園がない?」

(依)「あります!その公園に子供を連れてよく遊びに行ってます。」

(霊)「その公園付近で、お子さんが交通事故に会うかもしれないわ。」

(依)「そ、そうなんですか!?」

子供が事故に会う可能性を指摘され、焦る依頼人。霊能者はまだ霊視をしているようである。

(霊)「・・・その公園の近くにカーブになった道が無いかしら?」

(依)「確か、無かったと思いますが・・・」

(霊)「そう・・・あなたが今思っている公園以外に公園はない? 近くにカーブがある公園が・・・ブランコやすべり台が視えるわ。」

(依)「・・・いえ、多分、無かったと思いますが・・・」

(霊)「私にはカーブの道が見えるの。お子さんが公園に向かう途中のカーブ。そこで事故にあう可能性が高いわ。」

(依)「そうですか・・・」

霊視を続けている様子の霊能者がしばらくして口を開いた。

(霊)「あなた、水子に心当たりはない?」

(依)「いえ、無いですが・・・」

霊能者はさらに霊視して、

(霊)「う〜ん・・・これは、あなたの母方の家系の水子ね。三代前か四代前。おろした後、供養をしなかったんで、成仏できなくって、そのままこの世に居付いちゃったのね。
 そして、優しいあなたにすがって来たみたいだけど、この水子が他の良くない霊も引き寄せる結果になっちゃってるわね。」


(依)「そうですか・・・」 不安の色を隠せない依頼人。

(霊)「あなた、最近、身の周りに良くないことが起きていない?」

(依)「はい・・・とりたてて大きな不幸は起きていないんですが、言われてみれば、心当たりがないことも・・・」

(霊)「そう。このまま放っておけば、大きな不幸が起きるかも知れないわね。」

(依)「あの・・・子供の事故も集まって来た霊たちが引き起こそうとしているんでしょうか?」

(霊)「お子さんの事故は、主として水子の方ね。悪意は無いんだけど、友達が欲しくてあちら側に呼ぼうとしているのよ。そして、集まって来た霊たちもそれに協力しているわ。」



(参考)上記は基本的に管理人の創作であるが、一部、先日TVで見た、自称霊能者と芸能人との会話を参考にした。

 上記の霊能者の会話は、主として、(その1)で説明した「バーナム効果」を応用したものだが、気づいた人はいるだろうか。もし、気づけたなら、その人は、思慮深く、多少のことでは騙されたりしない人ではないかと思われる。

 「バーナム効果」の定義は以下の通りであり、基本的には「性格」に関するものであるが、それを「誰にでも該当するような曖昧で一般的な
事柄にしたものが上記会話で使用されている手法である。
Wikipedia「バーナム効果
誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述を、自分だけに当てはまる正確なものだと捉えてしまう心理学の現象。

 まずは、上記で霊能者が依頼人に質問した言葉をピックアップしてみよう。
@「あなた、お子さんが交通事故にあいそうになったことない?」

A「公園が見えるわ・・・家の近くに公園がない?」

B「その公園の近くにカーブなった道が無いかしら?」

C「そう・・・あなたが今思っている公園以外に公園はない? 近くにカーブがある公園が・・・ブランコやすべり台が視えるわ。」

D「あなた、水子に心当たりはない?」

E「あなた、最近、身の周りに良くないことが起きていない?」
 先述した通り、依頼人は「東京23区に住む女性で3歳と6歳の子供がいる」という設定である。

 それを念頭にピックアップした質問を再度、見てみれば、結局、「同じ条件の人であれば、誰にでも該当するような曖昧で一般的な事柄であることが分かるであろう。順に解説して行こう。
@「あなた、お子さんが交通事故にあいそうになったことない?」

 3歳と6歳という小さな子供がいて、その子供が交通事故にあいそうになったことがない人などいないのではないだろうか。

 もし、仮に、相手から「ありません」という答えが返って来ても、

 「いいえ、あなたの見ていないところで、かなり危ない目に会ってるわね。ギリギリのところで助かってるけど。」

と言えば良いだけの話である。毎日24時間子供を監視することなど不可能だから、そう言われても否定することは出来ない。

 また、「実は、今、交通事故で入院しているんです」という答えが返って来たら、

 「そう。私に会いに来るのが少し遅かったみたいね。」

とでも言えば良いだけの話である。さらに、

 「でも、まだ、危険は去っていないわ。このままだと、退院してもまた事故に会うわよ。」

と言っておけば、自称霊能者の予定通りに、水子の話へとつなげることが出来ることになる。


 このように、まず、誰にでも当てはまることを言い、仮に、相手が例外であっても臨機応変に上手く対応すれば、霊能者の霊視は外れたことにはならずに、かつ、依頼人をどのような話にでも誘導することが可能なのである。


A「公園が見えるわ・・・家の近くに公園がない?」

 依頼人は東京23区に住んでいるのだから、多くのケースで近くに公園があることになるだろう。また、「近く」の定義も曖昧だから、「近く」の範囲を広げて行くと必ず公園が存在することになる。


B「その公園の近くにカーブなった道が無いかしら?」

 「真っ直ぐな道しかない街」など存在しないのだから、先程と同様、「近く」の範囲を広げれば、近くにカーブのある公園は通常、一つくらい見つかるであろう。

 また、「カーブ」の定義も「近く」と同様、曖昧であるから、多少曲がった道がありさえすれば当てはまることになる。


C「そう・・・あなたが今思っている公園以外に公園はない?近くにカーブがある公園が・・・ブランコやすべり台が視えるわ。」

 依頼人が「近くにカーブのある公園」を見つけられないようなので、他の公園も思い浮かべるように促しているが、結局、この試みは失敗したようである。

 仮に、依頼人が別の公園を思い出して、その近くにカーブがあることに気づいたら、依頼人は「先生は、こっちの公園のことを言っていたのか!」と思うことになる。

 また、依頼人が霊能者と会話している最中はそのような公園を見つけることが出来なくても、後日、子供が通う幼稚園にブランコとすべり台があり、かつ、その前の道がカーブになっていることに気づいたら、「先生は、この幼稚園のことを言ってたんだわ!」と思うことになる。

 実際は、言葉の解釈を広げれば、「近くにカーブのあり、かつ、ブランコとすべり台のある公園」は通常、一つくらい見つかるものなのだが、それを「自分だけに当てはまる正確なものだと捉えてしまう」のが「バーナム効果」なのである。


 なお、霊能者は、「ブランコやすべり台が視えるわ」とも言っているが、普通、公園にはブランコやすべり台がある。


D「あなた、水子に心当たりはない?」

 これも、先祖をさかのぼって行けば、水子がいない家系など存在しない。


E「あなた、最近、身の周りに良くないことが起きていない?」

 通常、良い事しか起きないこともなければ、悪い事しか起きないこともない。ただ、「最近、ついてるなぁ」とか「最近、ついてなぁ」と思うことはある。

 そして、「最近、ついてるなぁ」と思う時には、「ついている」と思うことが複数、起きていて、それが印象に残っているに過ぎず、探せば、小さな「ついていない事」はあるはずである。

 上記会話では、「とりたてて大きな不幸は起きていないんですが、言われてみれば、心当たりがないことも・・・」という回答にしたが、これは、「探してみたら、小さな『ついていない事』がある」という当たり前のことを言っているに過ぎない。

 以上見て来たように、上記会話では、霊能者は「誰にでも該当するような曖昧で一般的な事柄、つまりは、「当たり前のこと」「通常、当てはまること」を依頼人に問い掛けているに過ぎないのである。

 そして、
この「当たり前のこと」を複数投げ掛けることによって、中には依頼人にドンピシャで当てはまるケースが出て来ることになる

 上記会話では、「あなた、お子さんが交通事故にあいそうになったことない?」という問い掛けに対して、依頼人は偶然、最近、子供が交通事故にあいそうになった経験をしていたので、まさに、ドンピシャ。依頼人は、「先生の言う通りです!」、「先生は本当に視えてるんだ!」と思ってしまうことになるのである。

 先にピックアップした他の霊能者の問い掛けについても、ドンピシャで当てはまるケースを考えてみよう。
A「公園が見えるわ・・・家の近くに公園がない?」

 家のすぐ前とか、本当に近い所に公園がある。


B「公園が見えるわ・・・家の近くに公園がない?」
C「そう・・・あなたが今思っている公園以外に公園はない?近くにカーブがある公園が・・・ブランコやすべり台が視えるわ。」

 家の近くにある公園のすぐ前の道がカーブになっている。その公園にブランコとすべり台がある。


D「あなた、水子に心当たりはない?」

 自分に流産、もしくは堕胎の経験がある。


E「あなた、最近、身の周りに良くないことが起きていない?」

 「最近、ついてないなぁ」と昨日、思ったばかり。または、家族に交通事故等の大きな不幸が起きていた。

 以上、「当たり前のこと」を複数問い掛けて行くと、その内、ドンピシャで当てはまるものが出て来る。そうすると、依頼人は「すごい、当たってる!」と強く思うことになり、一方、それ以外の事柄も「誰にでも当てはまること」だから、外れてはいない。

 そして、もし、依頼人に心当たりのない問い掛けがあったとしても、ドンピシャで当てられたケースがある為に霊能者の能力を疑うことはできず、むしろ、「自分が見つけられないだけ」等と自分の方に落ち度があるように考えてしまうことになるのである。

<参考> (2013.3.26追記)
 上記のように、誰にでも当てはまる問い掛けを連発していく手法を「ストックスピール」と言う。




 ※(その5)へ続く



2012.3.19新規






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