『2015年に来る真の危機から脱出せよ!』にツッコミ!(その3) ・・・ 中丸薫さま

※当記事は、(その1)(その2)からの続き。



 本書は、「闇の権力」という言葉が頻繁に登場する通り、陰謀論のド真ん中を行く書籍なのであるが、当記事では、どんなトンデモ論が主張されているのかを見て行きたい。




 まずは、2011年に発生した東日本大震災関連のトンデモ主張から見て行こう。
<P.29>
 ちなみに、HAARPでどの程度の地震が起こせるかと言えば、2011年3月11日の東日本大震災を引き起こした地震ほどの規模の地震は無理だと言われています。拙著でも述べてきた通り、あの地震は人工的なものですが、HAARPだけでなく海底地下深くに仕掛けられた核爆弾が直接の原因です。

(注)文字に色を付けたのは管理人(以下同様)
<参考>HAARP
 HAARPとは、本来、高周波活性オーロラ調査プログラムのことである。
 このプロジェクトに基づき、アラスカ州南東部のガコナに巨大アンテナ複合施設が作られ、その施設から大出力の高周波を電離層に照射することが出来るのだが、陰謀論では、この施設が地震を発生させたり、気象や人の心をコントロールしたりする兵器として扱われる。

 中丸様によると、どうやら、東日本大震災は、「海底地下深くに仕掛けられた核爆弾が直接の原因」らしい。

 そして、ここでは触れられていないが、その核爆弾を仕掛けたのは科学掘削船「ちきゅう」のようである。

 また、「ちきゅう」関連では次のような記述もある。
<P.134>
 先に少し触れましたが、日本の原発はまだ狙われています。日本の船ですが、すっかり外国人の手で運営されている科学掘削船「ちきゅう」が、今しばらく行方知れずです。この船は、海底からさらに深い地中を掘削できるドリル船です。
 
どうやらこの「ちきゅう」が浜岡原発の沖に何かを埋めたようなのです。もし、浜岡原発沖に大地震が発生し、原発が破壊され、放射能が大量に漏れるようなことがあれば、完全に原発の時代は終わり、エネルギー源はシェールガスに移行します。
 この「ちきゅう」、どうやら、「今しばらく行方知れず」らしく、また、「浜岡原発の沖に何かを埋めた」そうで、浜岡原発沖の大地震を懸念する中丸様。

 順にツッコんで行こう。

 まず、科学掘削船「ちきゅう」であるが、Wikipediaでの説明は以下の通り。
Wikipedia「ちきゅう」より
ちきゅうは、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の一部門である地球深部探査センター(CDEX)が建造・運用し、運航業務及び掘削業務は日本マントル・クエストが担当する科学掘削船(深海掘削船)である。日本・米国が主導する統合国際深海掘削計画(IODP)において中心的な掘削任務を担当する。 巨大地震・津波の発生メカニズムの解明、地下に広がる生命圏の解明、地球環境変動の解明、そして、人類未踏のマントルへの到達という壮大な科学目標を掲げている。船名の「ちきゅう」は一般公募で選ばれ、映画「日本沈没」でも、実名で登場している。
 このように、深海を掘削することで、地層の構造や、そこに生息する生命圏を調査したりしている船なのである。

 この「ちきゅう」は東日本大震災のおり、たまたま、八戸沖に停泊していたことから、陰謀論者から当該大震災の加害者扱いをされることになった。

 当然、
荒唐無稽のただのデマに過ぎないのだが、中丸様はこのようなトンデモ話を真に受けてしまっているようである。

 一応、デマに過ぎない根拠を上げておこう。
○「ちきゅう」が震災当時、八戸沖に停泊していたのは、八戸沖で行われる研究活動(テーマは「深部石炭に支えられた海底下炭化水素循環と生命活動」)の為であり、また、震災発生時は、船内見学で八戸市立中居林小学校の児童48人と先生4人が乗船していた。

○「ちきゅう」は、東日本大震災以前に宮城県沖で掘削をやったことは一度もない。ただし、2014年には、東日本大震災が発生したメカニズムを調べる為に掘削を行っている。

○2012年4月27日に、「ちきゅう」のドリルが海面からの深さ
7740m(水深6,883.5m+海底下856.5m)に到達して世界記録を更新した。ちなみに、東日本大震災の震源の深さは約24km

○「ちきゅう」が掘削する速度は、3700mで約1ヵ月(※試験掘削時。当然、深くなればなるほど、掘削は困難になり時間もかかる)。

○核爆発で発生した地震と自然に発生した地震とでは、地震波の波形が異なるので区別出来る。


<参考>
○『検証 大震災の予言・陰謀論』(ASIOS/文芸社/2011)P.38-56
○Wikipedia「ちきゅう
○サイエンスポータル編集ニュース「2011年3月9日 『ちきゅう』八戸沖で海底下2,200メートル掘削へ
○独立行政法人海洋研究開発機構 プレスリリース「地球深部探査船「ちきゅう」による 統合国際深海掘削計画(IODP)第343次研究航海 「東北地方太平洋沖地震調査掘削」の実施について 〜巨大地震と津波を引き起こしたプレート境界断層の摩擦特性の解明へ〜
○Wikipedia「人工地震

 また、中丸様によると、この「ちきゅう」が「今しばらく行方知れず」らしい。本書『2015年に来る真の危機から脱出せよ!』の発売が2013年3月のことだから、それより少し前の話だろうか。

 もちろん、行方不明になったら大事件であり、ニュースにもなるはずだが、そんなニュースは聞いたこともない。

 なお、JAMSTEC 地球深部探査センターのHPでは、「現在のちきゅう」というページがあり、「ちきゅう」が今どこでどんな作業をしているのかが分かる仕組みになっているし、また、地球深部探査センターのHPの「ちきゅうニュース」では今後の予定が公開されている。

 仮に陰謀論者たちが「ちきゅう」を監視していたとしても、彼らの目から「行方知れず」になりようもないのだが、「ちきゅう」が港からいなくなったら(出港したら)、
「行方不明だ!」「また、どこかに核爆弾を仕掛けに行ったんだ!」と騒いでるレベルではないだろうか。。。


 さらに、中丸様は、この「ちきゅう」が「浜岡原発の沖に何かを埋めた」とも言っていた。

 しかし、AMSTEC 地球深部探査センターのHPの「研究航海」を見てみたが、東日本大震災以降、かつ、本書の発売までの間に
「ちきゅう」が静岡県沖で掘削作業をしたと言う情報はない

 そして、「ちきゅうニュース」の方を見てみると、多少関連する情報としては次の二つのニュースがあった。
地球深部探査船「ちきゅう」の補修の状況と今後の予定について」 2011年6月17日
今後の予定
6月18日〜7月3日:検査及び補修後の試験航海(駿河湾※)
・7月3日〜7月10日:航海前準備作業(横浜港)
・7月10日〜12月(予定):資源掘削(スリランカ沖)
・推進装置の取付工事については、資源掘削終了後、今年度末までに行う予定です。
地球深部探査船「ちきゅう」による 統合国際深海掘削計画(IODP)第343次研究航海 「東北地方太平洋沖地震調査掘削」の実施について 〜巨大地震と津波を引き起こしたプレート境界断層の摩擦特性の解明へ〜 」 2012年3月9日
航海日程

平成24年4月1日 静岡県清水港出港
平成24年5月24日 静岡県清水港にて乗船研究チームが下船(研究航海の完了)
全54日間
なお、気象条件や調査の進捗状況によって変更する場合があります。
 まず、一つ目は、東日本大震災で損傷した「ちきゅう」が補修後、2011年6月18日〜7月3日に駿河湾で試験航海をするというものである。

 そして、二つ目は、東北地方太平洋沖地震調査掘削を実施する為に、2012年4月1日に静岡県清水港を出港するという話である。

 おそらくは、一つ目の駿河湾での試験航海を、陰謀論者たちが勝手に勘ぐって
「駿河湾沖でウロチョロしている!また、核爆弾を埋めているに違いない!静岡と言えば、浜岡原発だ!浜岡原発狙いに違いない!」てな感じでデマを流したのではないかと思われる。




 以上、そもそもが荒唐無稽の話である上に、ちょっと調べれば、それに反する情報など簡単に手に入るレベルのもの。

 そんなガセネタにまんまと騙され、本来は、地層の状況を解明する等して、地震に対する防災・減災に貢献している「ちきゅう」を、東日本大震災を引き起こした実行犯であると主張し、さらに、引き続き日本に大震災を起こす為の仕掛けを行っているなどと主張する。

 やってることは、「全くの無実の人に対して、妄想レベルの脆弱な根拠に基づいて『あいつは殺人犯だ!』と触れ回っている」のと同じことである。

 果たして中丸様は、自分がしていることを理解できているのだろうか?

<参考>
○「ちきゅう」の東日本大震災関連の陰謀論への批判は、以下の書籍に詳しい。

 『検証 大震災の予言・陰謀論』(ASIOS/文芸社/2011)P.38-56

    



○「ちきゅう」について、より詳しく知りたい方は、以下のHPへどうぞ。

 HP「JAMSTEC 地球深部探査センター」 → 「地球深部探査船「ちきゅう」



 さて、(その4)でも引き続き、中丸様の陰謀論関連の主張を見て行きたい。



2013.11.19 新規

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デマを拡散するのも、いい加減にシロ!!