『2012年の奇蹟』にツッコミ!(その1) ・・・ 中丸薫さま |
書 名 |
愛の光でアセンション 2012年の奇蹟 |
著 者 |
中丸薫 |
出版社 |
あ・うん |
価 格 |
1,400円(税別) |
出版年月 |
2007年7月 |
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●本書概要 |
本書カバーのソデ部分より
愛の光でアセンション
この世に生まれた究極の目的は、
永遠の生命である自らの心を、
豊かな光のある心にすることです。
この世はそのための修行の場です。
日本人、一億3000万人の10分の1が
「浄化」によって変われば、
一瞬にして日本全体が変わります。
臆することなく、ともに「光」を抱き、
つねに「光」を感じながら、
一歩一歩、歩みを進めましょう。 |
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●詳細&ツッコミ |
2012年の年末に地球がフォトンベルトに突入し、アセンション(次元上昇)が起きると主張している自称霊能者やオカルト研究者等が少なからずいたが、中丸様もその内の一人である。
もちろん、そのようなことは起きなかったが、自称霊能者の中丸様が2012年年末にどのようなことが起きると主張していたのか、その著書『2012年の奇蹟』を中心に見て行きたい。
本書によると、「2012年12月22日の真夜中に、地球はフォトンベルトに突入」(P.1)するらしいのだが、まず、「フォトンベルト」の説明から見て行こう。
<P.27-28>
フォトンとは、日本語では「光子」と訳されますが、ようするに「光エネルギー」のことです。強力な光エネルギーは、生命体を原子レベルから変成させ、進化させるともいわれています。
その、光エネルギーが巨大なベルトとなって宇宙に存在しているのがフォトンベルトで、今から2万6000年前に、地球がそのフォトンベルトに入ったときには、世界中で天災が多発したと見られています。
そして、2万6000年を経た現在、再びそのフォトンベルトに地球が入ろうとしているということです。これにともなって、さまざまな大変動が予測されています。
地球のフォトンベルト突入の日は、2012年12月22日。この日の真夜中ですから、実質、12月23日にその現象は始まることになるでしょう。
(注)文字に色を付けたのは管理人(以下同様) |
「フォトンとは」「『光エネルギー』のこと」で、そのエネルギーは、「生命体を原子レベルから変成させ、進化させる」らしい。
そして、「光エネルギーが巨大なベルトとなって宇宙に存在しているのがフォトンベルト」で、どうやら地球は、「2万6000年」周期でそこに突入しているそうである。
また、別の箇所で、「フォトン」について、もう少し詳しい説明があるので、そちらも見てみよう。
<P.34>
フォトンが「光子」のことであると紹介しました。もっと詳しくいうと、フォトンとは、陽子(反電子)と電子の衝突によって、光粒子に変換される高次元の電磁波エネルギーです。このエネルギーは「光子=フォトン」であり、光エネルギーです。
水素や酸素など元素の一番小さな状態が「原子」ですが、原子の中心には陽子と中性子からできた「原子核」があり、そのまわりを回っているのが「電子」です。この電子と陽子が衝突することで生まれるのです。
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どうやら、「フォトンとは、陽子(反電子)と電子の衝突によって、光粒子に変換される高次元の電磁波エネルギー」らしい。
管理人は物理の分野については、あまり詳しくないのだが、一般向けのまともな書籍に以下のような似た説明があり、基本的にはこの説明は正しいのだろう。
『マンガでわかる超ひも理論』 (白石拓(著)・工藤六助(画)/宝島社文庫/2008) P.74-75
素粒子とその反粒子が出会うと、両者はたちどころに消滅してしまいます。たとえば、電子と陽電子が出会うとそれらは消滅して、エネルギーのかたまりである光子(電磁波)になります。 |
(注)以下の陽子、陽電子等に関する説明も本書を参考にした。
ただし、誤っている箇所が数か所ある。
まず一つ目は、「陽子(反電子)と電子の衝突によって」とあるが、これは、「陽子」ではなくて、「陽電子」。
「陽子」とは、中性子と共に原子の原子核を構成するもので、素粒子である三つのクォークで構成されている。素粒子とは、物質を構成する最小単位のことである。(つまりは、「陽子」は素粒子ではない)
一方、「陽電子」とは、質量は「電子」と同じだが、電荷が逆の素粒子ことで「反電子」とも呼ばれる(「陽電子」の電荷はプラスで、「電子」はマイナス。なお、「電子」も素粒子である)。
また、このような互いに電荷が逆である双子のような素粒子を元の素粒子に対して反粒子と呼ぶが、素粒子と反粒子が出会うと両者はたちどころに消滅する(対消滅)。
上記の中丸様のフォトンに関する説明も、基本的に、この対消滅の際に生じるエネルギーについて述べている。「陽子」と「陽電子」で名前が似ているので混同してしまったのだろう。
そして、二つ目の誤りは、「高次元の電磁波エネルギー」の「高次元」の部分である。
なんだよ、「高次元」って。
「高次元」でもなんでもない、普通の「電磁波エネルギー」だろうに。
「次元」という言葉自体はもちろん、物理学の分野でも使われるものだが、ここで使われている「高次元」は、例えば、「高次元の霊」、「高次元の存在」というように、スピ系・オカルト系で使用される意味として使用されている。
おそらく、ただの電磁波エネルギーではなく、「高次元の電磁波エネルギー」とすることで、そのエネルギーが「生命体を原子レベルから変成させ、進化させる」ということに結びつけたいのではないかと思われる。
中丸様、物理的な現象の説明をしている所に、しれっと、訳の分からないスピ用語・オカルト用語を紛れ込まさないでくれます?(笑)
さて、一旦、中丸様の話は置いておいて、このような「フォトンベルト」なるデタラメ話が世に登場した発端について、『謎解き超常現象』(ASIOS/彩図社)にて記載されているので確認しておこう。
『謎解き超常現象』(ASIOS/彩図社/2009.5) P.284
ドイツの作家(天文学者ではない)ポール・オットー・ヘッセがフォトン・ベルトというアイデアを提唱したのは、1949年に出版した『Der Jungste Tag(最後の審判の日)』という本の中である。無論、当時は人工衛星などというものはまだ存在していない。本の内容は実際は観測に基づかないデタラメなものであった。ヘッセは歳差運動を否定し、太陽系そのものが2万4000年周期で回転していると唱えたのだ。 |
ここにあるように、「フォトン・ベルト」というアイデアを提唱したのは、ドイツの作家のポール・オットー・ヘッセであり、その内容はデタラメなものであったのである。
このポール・オットー・ヘッセは、中丸様の『2012年の奇蹟』にも登場しているので、その箇所を見てみよう。
<P.31>
フォトンベルトの存在が最初に確認されたのは1961年のことです。ドイツ人のポール・オットー・ヘッセ博士が人工衛星を使って観測している時にプレアデス星団付近で奇妙な星雲を発見しました。
通常、星雲は宇宙のチリやガスが集まってできるため、質量はないに等しいものだそうです。ところが、その星雲には質量が認められたというのです。 |
この文章、デタラメだらけなのだが、まず、先程触れた、ただの作家であるポール・オットー・ヘッセが「人工衛星を使って観測している時に」「発見」としているところがデタラメ。
次に、「1961年」に「人工衛星を使って観測」というのもデタラメ。
世界初の人工衛星は、ソ連が1957年10月4日に打ち上げたスプートニク1号で、打ち上げから92日後の1958年1月4日に高度がさがり、大気圏に再突入し消滅した。
続いて人工衛星の打ち上げに成功したのはアメリカで、1958年1月31日のエクスプローラー1号である。このエクスプローラー1号の電力は1958年5月23日までに消耗。その後も軌道を周回し、1970年3月31日に太平洋上へ再突入した。
そして、3番目に成功したのはフランスで、1965年に打ち上げられたアステリックスである。
このように、「1961年」時点で衛星軌道上に存在した人工衛星はアメリカのエクスプローラー1号なのだが、計測器として搭載していたのは宇宙線計測用のガイガーカウンターである上、その時点で電力を消耗していて使いものにならない。
まあ、そもそも論として、ポール・オットー・ヘッセが「フォトン・ベルト」というアイデアを提唱したのは上述の通り1949年のことであるから、そこからして既にデタラメである。
<参考>
発見した人物名はかろうじて合っているが、発見した時期も状況もデタラメ。(というか、そもそも、「発見」したワケではないのだが)
当然、その時に発見されたという「フォトン・ベルト」とやらもデタラメである。
ちなみに、中丸様による上記の「フォトン・ベルト」に関する説明は基本的に、本書に参考資料としてあげられている書籍の一つ、『フォトン・ベルトの謎』(渡邊延朗/三五館/2002/P.104-)の受け売りである。
以上、「フォトン・ベルト」なるものが本当に存在するか否かを見抜けない上に、それに伴うガセネタの真偽も見抜けない自称霊能者の中丸様。
もうこの時点で終わっているのだが、さらに、中丸様が、2012年12月22日に地球が「フォトン・ベルト」とやらに突入するとどうなると主張していたのかを(その2)で見て行きたい。
2013.10.1 新規
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