『「聖書の暗号」の大事なポイント』にツッコミ!(その1) ・・・ 船井幸雄様

書 名  「聖書の暗号」の大事なポイント
著 者  船井幸雄
出版社  ヒカルランド
価 格  1,700円(税別)
 出版年月  2010年9月

●本書概要

 下記のものは、本書のカバーのそでに記載されているのものを一部抜粋したものである。
◎聖書の暗号は、われわれにもう一つ上の次元(5次元)を教えてくれる
◎聖書の暗号の起源は、ニルバーナ(あの世)のアカシックレコードといえよう
◎アカシックレコードの制作者は、宇宙の創造主らしい
◎聖書の暗号の「愛のコード」の制作者は、ムー文明最後の王ラーマ
◎聖書の暗号の「愛のコード」は、すばらしいミロクの世を創るために、プログラムされたと考えられる
◎もちろん「悪のコード」もあるが、創ったのはレプティリアン系知的生命らしい。聖書全体にも同様の背景があるようだ
◎日本人が、日本から世界に先駆けてミロクの世を創りはじめる確率が高いようだ


●ツッコミ

 題名の通り、本書は「聖書の暗号」について記載された本なのであるが、船井様によると「聖書の暗号は、99%有用で現実に即しています。これを否定することは調べれば調べるほど不可能のよう」(P.49)らしい。


 本書へのツッコミを入れる前に、まず、「聖書の暗号」について押さえておきたい。


 「聖書の暗号」とは、旧約聖書の中に過去、現在、そして未来の出来事等が暗号化されて記載されていると言うもの。

 元記者であるマイケル・ドロズニン氏が世に広め、その著書『聖書の暗号』は、1997年に日本でも発売されて話題になった。

     『聖書の暗号』 (マイケル・ドロズニン(著)/木原武一(訳)/新潮社/1997年8月)

 より詳細には、暗号が隠されているとされるのは、ヘブライ語で書かれた旧約聖書で、いわゆるモーセ五書(創世記・出エジプト記・レビ記・民数記・申命記)と言われるものである。
 その全体の30万4805字を連続する文字列に変えると、人物の名前や出来事等を示す言葉が、等間隔で記載されているとされる。

 具体的に、どのように暗号化されて予言されているとされるのかを見てみよう。

 「聖書の暗号」には船井様も予言されていたらしく、『「聖書の暗号」の大事なポイント』には、その予言部分が以下の通り掲載されている。
『「聖書の暗号」の大事なポイント』 (船井幸雄/ヒカルランド) P.27

※画像をクリックすると大きい画像を参照可
※大きい画像でもヘブライ語の文字は見づらいが、元々が小さいのでご容赦願いたい
※色付きの円は管理人が付けたもの(別途、説明)
 上記には、船井様の名前と共に、生年月日、及び、「経営」、「コンサルタント」という言葉が示されている。

 このようなものを提示されてしまうと、「すごい!」と思ってしまうかも知れないが、実はそうではない。

 まず、ヘブライ語の基礎について押さえておこう。


○ヘブライ語は下記の通り全22文字。全て子音で、かつ、数字もこの22文字で表す。

※上記の中には、語末に来ると変形するものがある(説明は省略)。
 日本語のローマ字表記で、ヘブライ語の特徴を説明してみよう。(※あくまで、「おおざっぱに説明すれば」というレベルなのでご留意いただきたい)

 例えば、「聖書」のローマ字表記は「SEISHO」となるが、ヘブライ語の場合、子音のみなので「SISH」と表記されることになる。

 そして、「SISH」は、「S
ISH」と読めば、「聖書」、「清書」、「盛暑」等を意味するものと捉えることができ、また、「SISH」と読めば「最初」、「細書」、そして、「SISH」と読めば「水車」と捉えることができるのである。

 さらに、「SISH」を数字と捉えれば、「370」(60+10+300)になる。(※ただし、数字の場合、実際にはこのような順序で記述されない)


 このように、ヘブライ語は、暗号を探す上で、かなり融通の効く言葉であり、日本語や英語で書かれた書物よりもはるかに、自分の探したい言葉や情報が見つかる可能性が高いのである。


 さらに、「聖書の暗号」では、次のような特徴がある。

○文字の間隔は任意

 例えば、全30万4805字から「SISH」という文字列を探した場合、それぞれの文字が10文字間隔で見つかっても、100文字間隔で見つかってもOKである。


○見つかる言葉は、前からでも後ろからでもOK

 見つかる文字列は、元の文章通りの方向でも、その逆の方向でもOKである。


○求めている情報が出てくるまで、似た言葉で探せばOK

 例えば、2011年3月に起きた東日本大震災の情報を探すとしよう。

 まず、「東日本」で探して無ければ、「東北地方」で探せば良いし、「福島」などの県名でも良いだろう。また、「地震」で見つからなければ、「震災」や「大災害」、「カタストロフィー」でも良いのである。(※あくまで、日本語で、たとえればの話)

 そして、自分の思いついたキーワードでは、「東北地方」しかヒットしなかったとする。それならば、ヒットした「東北地方」の周辺を直接探して、それっぽい言葉、例えば「大地の怒り」等が見つかればOKである。

 そのようにして、それっぽい情報の組み合せが見つかれば、「予言されていた!」と主張することができるのである。


○人物名の場合、名字と名前が別々に見つかっても良いし、名前だけでもOK

 上記に掲載した船井様の予言を見ても分かる通り、名字と名前は別にひとつながりである必要はなく、別々に見つかってもOK。
 また、名前だけでもOKである(※例えば、ヒトラーやエジソン等の予言は名前のみである(『聖書の暗号』新潮社P.43、52))。


○日付の場合、年号と月日は別々に見つかっても良いし、年号のみ、もしくは、月日のみでもOK。しかも、無かったら無かったでOK

 上記の船井様の予言では、年号と月日は別々に見つかっている(一応交差しているが)。そして、『聖書の暗号』(新潮社)では、年号のみ、月日のみ、もしくは、日付そのものが無い場合もある。
※例えば、『聖書の暗号」(新潮社)では、以下のケースが見られる
○年号のみ・・・ラビン首相の暗殺(P.17)
○月日のみ・・・フセインのスカッドミサイル発射(P.17)、シューメーカー‐レヴィ彗星の木星衝突(P,39)
○日付無し・・・クリントン大統領(P.34)、シェイクスピア(P.51)
 さらに、「聖書の暗号」のいい加減さを物語っているのが、年号の千の位が無くても、しれっと千の位も含めて予言されたかの如く記載されていることである。

 『聖書の暗号』(新潮社)に記載された、分かりやすい事例を見てみよう。
『聖書の暗号』(マイケル・ドロズニン/新潮社) P.61
 まず、上部のものの年号を確認してみよう。

 の5文字が四角で囲われている。を数値変換すると「5」で、これは千の位を表している。次に残りの4文字を数値変換して加算すると756(400+300+50+6)となり、これら5文字で、注釈通り「5756」が表されていることが分かる。

 なお、異常に大きな年号が示されているが、これはユダヤ暦で、紀元をユダヤ教において神が世界を創造したとされる日(西暦で紀元前3761年)に置くからである。


 次に下部のものの年号を見てみよう。

 の5文字であるが、最初のは、英語の「in」と同様の前置詞としても使用される文字である。そして、残り4文字は上のものと全く同じだから、数値変換すると「756」となる。

 つまり、注釈には「IN 5756」と記載されているが、実際には、
「IN 756」、もしくは、を数字として捉えれば「2756」なのであり、千の位の「5」など無いのである。

 ちなみに、このような事例が、『聖書の暗号』(新潮社)では他にも、P.72、104、122などに見られる。


○仮に、関係の無い言葉が見つかっても無視する

 上記の船井様の予言では、船井様に関連する言葉のみが示されているが、ヘブライ語の特性から、当然ながら、探せば全く関係の無い言葉も見つかる。

 例えば、ヘブライ語の単語を探してみると、以下のものを見つけることができた(上記の青色の円の部分)。

  (ナハル)=川、(ルル)=鶏舎、(イェレッド)=男児

 また、日本人の名字を探すと(上記の赤色の円の部分)、

  (TQN)=中田、(DMY)=山田

 ((注)ヘブライ語は右から左へと記述する。括弧内には、参考までに同値の英語のアルファベットを記載した)

 そして、年号を探すと(上記の緑色の円の部分)、

   (5,400+200+6)=5606(1846年)

を見つけることが出来た。

 管理人は、ヘブライ語について基礎の基礎しか分からない為、年号以外は容易に見つけやすい3文字の言葉を探したが、ヘブライ語の堪能な人が探せば、もっと長い文字で、かつ、もっと多くの言葉を見つけることが出来るであろう。

 そして、当然、このような言葉が見つかっても、船井様との関連が見い出せなければ、暗号としては無視されるのである。
※ヘブライ語については、以下のテキスト、及び、HPを参考にした
○『はじめてのヘブライ語』 (佐藤淳一/ミルトス)
○『まずはこれだけヘブライ語』 (青木偉作/国際語学社)
ヘブライ語の頁




 以上の説明で、「聖書の暗号」が如何に怪しいモノで、「結局、何でも見つかるんじゃないの?」程度には、ご理解いただけたのではないかと思う。

 そして、実際には、暗号など隠されておらず、「探そうと思えば、大抵のものは何でも見つかってしまう」ものであるから、過去に起きた出来事等は見つけることができても、未来については分からないのである。

 例えば、『聖書の暗号』(新潮社/1997年8月)では、次のような、未来についての暗号が見出されたと記載されている。
○2000年又は、2006年の核による世界戦争(P.144-145、他)
○2010年のロサンゼルス大地震(P.166-167)
○2000年の中国大地震(P.167-168)
○2000年〜2006年の日本大地震(P.169)
 もちろん、このようなことは起きなかった。(※日本大地震については、阪神大震災や東日本大震災クラスの大地震が発生しなかったので、外れたと判断)

 所詮は、
答えが分かってからでないと、暗号を探し出すことは出来ないのである。(※ラビン首相の暗殺については、事前に予言できたことになっているが、偶然の範疇を超えるものではないと言えよう)

 なお、マイケル・ドロズニン氏は、未来に関する暗号が当たらないことに対して、次のように述べている。
『聖書の暗号』(新潮社) P.186-187
 しかし、それはあらかじめきまっていたわけではなかった。それは一連の可能性であり、変更可能だったのである。
 インチキ予言者がする言い訳と、同様のものである(笑)。


 ちなみに、下記の本城達也氏のHPによると、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』を使って、「聖書の暗号」と同様の手法で暗号を探したら、やはり、リンカーンやジョン・F・ケネディ、ガンジー、その他の暗号が見つかったそうである。
○「超常現象の謎解き」 → 「聖書の暗号
 ※「聖書の暗号」のデタラメっぷりについては、該当ページもぜひ参考にしていただきたい
 「聖書の暗号」が、「探そうと思えば、大抵のものは何でも見つかってしまう」ものであることを示す分かり易い事例であると言えよう。


 続いて(その2)では、本格的に船井様の『「聖書の暗号」の大事なポイント』へのツッコミをして行きたい。



2012.01.31 新規

あ〜あ、船井様、また騙されちゃったネ。