考えることとは(その1)

 考える―――誰もが行ってきて、誰もが行っている、そして、誰もがこれからも行うことである。

 しかし、これが意外に、というか、想像以上に難しい。

 
「私は、まともに物事を考えることができません」

なんて思っている人はいないであろう。

 一時的にそう思うことはあっても、そんな考えはすぐに消え去る。また、
「私は頭が悪いですから」と言うことがあっても、それは謙遜であって、決して本心ではない。

 そして、多くの人が自分の考える力を過信し、
「○○は正しい」「○○は間違っている」「○○は素晴らしい」「○○はつまらない」などと判断して結論を出し、その結論を正しいと思って行動している。

 しかし、実際は、考える力には厳然とした格差があり、残念ながら
「この人、まともに考えることができないんだな」と思ってしまう人に遭遇することも頻繁にあるものである。

 当記事では、「考えること」に焦点を当て、どういうことが「まともに考えること」で、また、どういうことが「まともに考えられていないこと」かを考察して行きたい。

<参考>
 当記事の作成にあたっては、以下の書籍を大いに参考にした。

   『知っておきたい 考えることの基礎』 (石川倉二/星雲社/2010) P.10-22



1.考えることとは

 考える際、特に、正誤の判断や、原因の考察、また、最良の手段を模索する際、人はどのように考えているのだろうか。

 まずは、そのことを明らかにする為に、次の
「あるなしクイズ」をやってみてもらいたい。

 
「あるなしクイズ」とは、「ある」「ない」に分けられた言葉をもとに、片方に共通する特徴を見つけ出すクイズである。なお、次のものは「ある」側に共通の特徴がある。
<あるなしクイズ>
《ある》 《ない》
(1) 都会 田舎
(2) 麻酔 注射
(3) 痛い 快い
(4)
(5) 船着場
 さて、このクイズの答えを見つけ出す為に、皆さんはどのように考えただろうか。一度、自分の思考の過程を振り返ってみて欲しい。

 思い起こせば分かるように、それは
「仮説→検証」の繰り返しだったはずである。

 例えば、
「都会」には「日」という文字が含まれて「田舎」には含まれていない。それで、「《ある》側は、『「日」という文字が含まれている』が答えかも知れない」仮説を立てる。そして、検証の為に(2)の「麻酔」を見てみると「日」は含まれていないので、この仮説は誤っていたことが分かる。

 次に、例えば、
「都会」「トカイ」で最後が「イ」で終わっている。それで、「『《ある》側は、「イ」で終わっている』が答えかも知れない」仮説を立てる。そして、検証すると、(2)「麻酔」、(3)「痛い」「イ」で終わっているが、(4)、(5)は終わっておらず、この仮説も誤っていたことが判明する。

 このように、「仮説→検証」を繰り返して、答えにたどり着いた(着けなかった)はずであり、この繰り返しを図に表すと次のようになる。
 そして、このようなクイズの答えを探す時と同様、「仮説を立て」「条件に合っているか検証する」の繰り返しが考えることであり、判断であり、考察なのである

 例えば、ある主張が正しいか否か判断する際、次のように考える。
【仮説】
<その主張について>
@
「誤っているのでは」という仮説を立てる

【検証】
Aある条件に当てはまっているか検証する
B別の条件に当てはまるものか検証する
Cさらに別の条件に当てはまるものか検証する
     ・
     ・
 (思い付く限りの条件で検証する)
     ・
     ・

【判断・結論】
<思い付く条件を検証して全てクリアした>
○正しいと判断する

<思い付く条件を検証してクリアできなかった>
○誤っていると判断する



※上記では、「全ての条件をクリアするか否か」を判断基準としたが、最良の手段を考える際など、全ての条件をクリアすることを求めず、優先すべき、または最低限の条件をクリアしているだけで、実行に移す判断をすることもある。
 このように、クイズではなく、現実の物事について考える際も同様の「仮説→検証」というフローで考え、判断することになる。

 ただし、クイズとでは次の点で異なっていることになる。
○正解が明確でない場合が多い

 クイズの場合、答えを見れば正解が分かるが、現実の物事については正解が不明確である場合が多い。

 よって、自分が
「これが正解だ!」「これが正しい!」と思っていても、それが本当に正解か否かは分からないことがが多い。


○検証する為の条件は、自分で探し出さなければならない

 クイズの場合、必要な条件は全て問題文の中に提示されているが、現実の物事について考える際は、検証する為の条件は基本的に自分で探し出さなければならない。

 ただし、書籍、ブログ等で他人が既にその物事について考察している場合は、そこで提示されている条件を見て、他の条件が必要か考えるだけで済む場合もある。


○相反する条件が存在する場合がある

 クイズの場合は、問題の中に矛盾する条件はない。一方、現実の物事については、例えば、
「経済と環境のをどちらを優先するか」等、相反する条件が存在することがあり、条件毎に優先順位をつけるか、いくつかの条件を切り捨てる必要がある場合がある。


○終わりがない場合がある

 現実の物事については、より良い答えを見つける為に考え続けなければならない場合がある。例えば、
「自分は何の為に生きているのか」「世界から戦争を無くす為にはどうすれば良いか」等。

 このように、クイズと現実の物事を考える際では異なっている為、自分が出した結論に対して100%の確信を持って「正しい!」と考えることは慎むよう努めなければならない。(※lこのような0%か100%かの両極端で結論を出してしまうことを白黒思考と言う)

 正解が明確でないからであり、また、自分が抽出した条件が必要なものを全て網羅できているかも不明であるからである。




 以上、人は物事について考える際、まず仮説を立て、その仮説が正しいかさまざまな条件を考察して検証し、結論を出すことになる。

 それは、我々のような凡人であろうが、どんな天才であろうが同じであるし、また、
「まともに考えることができない人」も同じである。

 では、「まともに考えることができない人」というものは、考えることにおいてどのような過ちを犯しているのだろうか。

 続いて(その2)では、その点について見て行きたい。

<クイズの正解>
 「ある」側の文字をひらがなにすると、魚介類の名前が含まれている。

 (1)とかい(貝)
 (2)ますい(マス)
 (3)いたい(タイ)
 (4)こい(コイ)
 (5)ふなつきば(フナ)




2015.07.07新規

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