もっともらしいだけの根拠(その8)

 ※当記事は、記事(その1)(その2)(その3)(その4)(その5)(その6)(その7)からの続き



8.曖昧な条件付きの成就

 「曖昧な条件付きの成就」とは、曖昧な条件付きで、ある事象・出来事が成就・発生すると主張することである。

 例えば、占い師から次のように告げられた場合が、これに当たる。
誠心誠意取り組めば、プロジェクトは成功するでしょう。
 このケースでは、「誠心誠意取り組めば」「曖昧な条件」に当たる。

 果たして、どの程度までやれば、誠心誠意取り組んだことになるのであろうか。就業時間内で一生懸命頑張れば良いのだろうか。それとも、毎日、終電まで頑張れば良いのだろうか。非常に曖昧な内容である。

 このような曖昧な条件を付けることによって、以下のように、結果がどちらであっても占い師の占いは外れたことにならないのである。

<プロジェクトが成功した場合>

 占い師は、「私の言った通り誠心誠意取り組んだから、成功したんですよ」と相手に告げ、自分の占いのおかげであることを強調し、相手の信頼を勝ち取ることができる。


<プロジェクトが失敗した場合>

 占い師は、「私の言った通り誠心誠意取り組まなかったから、成功しなかったんですよ」と相手に告げれば、やはり、占いは当たったことになる。

 もし、相手が「誠心誠意やりました!」と反論して来た時は、例えば、次のように対応すれば良い。

@.相手に、「本当に誠心誠意取り組みましたか?あの時は、手を抜いちゃったなぁ、とかいうことはありませんでしたか?」と尋ねる。

 誠心誠意で取り組む意気込みであっても、関連する全ての事柄にそのように対応することなど、そもそも不可能であり、誰でも時に手を抜いてしまうことがあるものである。その、手を抜いた時のことを相手に思い出させれば、「ほら、やっぱり、誠心誠意が足りなかったでしょ」と相手のせいにすることが出来る。

 もし、相手が頑固に「いいえ、手を抜いたことなんかありませんでした」と主張してくる場合には、

A.相手がどのように誠心誠意取り組んだかを具体的に聞き出し、より、誠心誠意取り組んだ場合の行動を示す。

 例えば、
・毎日、終電まで頑張って仕事をするべきだった
・時に、休日出勤しても仕事をすべきだった
・会社の送別会は1次会のみ出席して、仕事に戻れば良かった  等々
 そして、このようなことをしなかったのは、相手の誠心誠意さが足りなかったからだと言って諭せば、やはり、条件は満たせなかったことにすることが出来る。


 このように、成功しようが失敗しようが、どちらでも、占いが当たったことに出来るのは、条件が曖昧な為である。

 そして、このことの裏を返せば、「曖昧な条件」さえ付けておけば、自分の予測や予言等は必ず当たったことにすることが出来ることになる。

 このことを踏まえて、管理人も少し予測・予言をしてみよう。
・根本的な対策がなされなければ、近いうちに日本経済は崩壊する
・多くの人が感謝の念を発して、関東地方を覆う悪しき想念を浄化しなければ、2013年に関東大震災が起きる
・清い心を持った人がもっと増えなければ、2025年に地球に大きな破滅が訪れる
 それぞれについて、結果は2通りあるわけだが、あえて対応例は記載しないので、その2通りのケースについて、どのように主張すれば、予測・予言が当たったことになるかを一度考えてみて欲しい。



 それでは、次に、この「曖昧な条件付きの成就」が実際に使われているケースを見てみよう。


(1).江本勝氏のケース

 江本勝氏は、水が文字や写真等の振動を感じとって、それに応じた結晶を作ると主張しており、例えば、水に「ありがとう」という文字を見せると綺麗な結晶ができ、「ばかやろう」という文字を見せると綺麗な結晶ができないと主張している。いわゆる疑似科学の分野の人である。

 この江本勝氏が、思いの力で雲を消せるという「雲消しゲーム」なるものを紹介しているので見てみよう。
『水は答えを知っている』 江本勝・サンマーク出版(P.126-127)
 あなたの思念が、どれだけ世界に影響を与えているのか、「雲消しゲーム」で実験をしてみるとよいでしょう。思いの力で雲を消してみる、というものです。
 晴れた日に、
青空に浮かぶ雲のうちから一つのターゲットを決めてください。たくさんあるうちの小さな雲を選ぶと、その雲だけが消えますので、よりわかりやすいかもしれません。
 
雲消しゲームには、心構えがとても大切です。まず、雲が消えるのを信じて疑わないこと、それからあまりに一生懸命やりすぎないようにすることです。これは逆説のようですが、一生懸命になりすぎると、のぼせてエネルギーがうまく飛んでいきません。
 さて、心構えができたら、
自分の心から見えないエネルギーがレーザー光線のように、雲に向けて放たれているところをイメージしてください。エネルギーは消したいターゲットの雲にまんべんなく放たれるようにします。
 そして、
「雲は消えた」と過去完了形でいいます。それと同時に、エネルギーに対して「ありがとうございました」と過去形でお礼をいうのです。この手順を踏めば、すぐに雲は薄く変化していき、数分のうちに消えてしまいます。
 人間の思念エネルギーは、これほどまでに強く万物に影響を与えることができるのです。雲は水からできていますし、しかも気体なので、もっとも早く思念に反応するのだと考えられます。

(※管理人注)文字に色を付けたのは管理人
 思いの力で雲を消す方法が解説されているが、この説明の中で、以下のものが「曖昧な条件」に当たる。
雲が消えるのを信じて疑わないこと、それからあまりに一生懸命やりすぎないようにすること
 「雲が消えるのを信じて疑わない」ということを完璧に実行するのは不可能に近いし、また、「一生懸命やりすぎない」は、どの程度までがそうなり、どの程度までがそうならないのか曖昧である。

 よって、「雲消しゲーム」をして、雲が消えた人には、

   「心構えが上手に守れたようだね。人の思念の力ってすごいでしょ」

と言えば良いし、一方、雲が消えなかった人には、

   「ちょっと、『消えないかも』って疑っちゃったんじゃない?」
   「一生懸命になり過ぎちゃったようだね」

などと言っておけば、「雲消しゲーム」の正しさは保障され続けることになるのである。


 ついでに、この「雲消しゲーム」のタネも明かしておこう。

 雲というものは、まず小さな積雲が生じて、それが風で流されながら成長してゆくもの。それがある程度まで大きくなると、今度は小さくなって、やがて消滅する。

 そして、江本氏のアドバイス通りに「小さな雲」を選べば、それは、これから大きくなっていく雲か、小さくなっていく雲かの二択になっていることになる。

 結局、「雲消しゲーム」は、運よく、小さくなっていく雲を選んだ時に、「自分の思念の力で消した」と勘違いして喜んでいるだけなのである(※大きくなっていく雲も、時間さえ掛ければ、いずれ消滅するが)。
<参考>
『謎解き 超常現象U』 P.138-142 ASIOS・彩図社



(2).引き寄せの法則のケース

 「引き寄せの法則」とは、簡単に言えば、自分の思いが現実の全てを引き寄せているとする考えである。

 例えば、ある人と恋人になれたのは、「その人と恋人になりたい」という思いがその現実を引き寄せたのであり、また、例えば、自分の家に泥棒が入ったのは、「泥棒に入られたらどうしよう」という思いがその結果を引き寄せたのである。

 よって、この 「引き寄せの法則」では、プラスイメージのことのみを思考し、マイナスイメージのことは考えるなと主張される。

 また、このような考えの帰結として、そこでは、自分の思い通りの現実を引き寄せる方法論が説かれることになる。

 この方法論は、様々な人が微妙に違った方法論を主張しているが、例えば、次のような方法で、思いのままの現実を引き寄せることができるとされる。
@.起こって欲しい現実を強くイメージし、既に起こったものとして自分の思考に植え付ける
A.「現実化しないのでは」という疑いの心を一切持ってはいけない

 @が「曖昧な条件」に当たり、また、Aの、「疑いの心を一切持たない」というのは不可能に近いと言えるだろう。

 よって、この方法で、思った通りの現実が起こった信者には、

  「ほら、言った通り、現実を引き寄せることが出来たでしょ。今回のその思いの感覚を忘れないで」

と言えばいいし、また、思った通りの現実が起きなかった信者には、

  「まだ、イメージの力が弱いみたいだね」
  「まだまだ無意識下では、疑いの心が払拭しきれてないね」

と言っておけばいいのである。




 以上、「曖昧な条件付きの成就」を見てきた。

 「曖昧な条件」さえ付けておけば、どんなデタラメな予言や理論でも、もっともらしく本物のように見せかけることが可能であることがお分かりいただけたのではないかと思う。

 ちなみに、この「曖昧な条件」で信者を騙せることは上記で説明した通りだが、逆に、信者サイドでも同じように、自分で自分を騙して、いつまでも信じ続けることが可能である。

 例えば、上記の「引き寄せの法則」で説明すると、

 思った通りの現実が起こった場合には、

  「すごい!本当に現実を引き寄せることができた!やっぱり、『引き寄せの法則』は本物だ!」

と思えばいいし、一方、思った通りの現実が起きなかった場合には、

  「今回は、イメージの力が少し足らなかったみたいだ」
  「あの時、うっすらと疑念が湧きあがりそうになったのがいけなかったんだ」

などと考えればいいのである。

 そうやって、「引き寄せの法則」を信じたいと思っていれば、いつまでも信じ続けて行くことができるのである。



2012.6.12新規

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