■


もっともらしいだけの根拠(その15)

 以下の記事では、単なるダジャレ等の言葉遊びに過ぎないものを根拠としているケースを解説したが、それらは基本的に、
日本語同士でダジャレ等を通して関連付けて、もっともらしく説明するものであった。

 ○記事「もっともらしいだけの根拠(その1) 言葉遊びによる根拠」


 同様なケースは、
日本語と他言語等、異なる言語間でも使用される手法であるので、本記事では当該ケースについて見た行きたい。


15.言葉遊びによる根拠�U(1)

<具体例その1>日ユ同祖論のケース�@ 〜単語の類似〜

 日ユ同祖論とは、「日本人とユダヤ人(古代イスラエル人)は共通の先祖を持つ兄弟民族である」という説であるが、その説の根拠の一つとして、日本語とヘブライ語(ユダヤ人が使用する言語)の単語の類似性が上げられることがある。

 例えば、書籍『失われたイスラエル10支族』では次の通り、日本語とヘブライ語で音と意味が類似している単語が上げられている。

 なお、特に、似ていると思われるものは青字にした。
『失われたイスラエル10支族』(ラビ・エリヤフ・アビハイル(著)鵬一輝(訳)/学研/2005) P.312-314
日本語 ヘブライ語
発音
表記 発音 意味
<名詞>
アタリ 辺り アタリ 辺り
カベ 壁 カベ 壁
ヤケド 火傷 ヤケド 火傷
ニオイ 匂い ニホヒ 匂い
イト 糸 フト 糸
ヌサ 幣 ネス 旗
ウデ 腕 ヤド 手
カタ 肩 カタフ 肩
コトバ 言葉 キタバ 書き物
オワリ 終わり アハリ 終わり
キョウ 今日 カヨム 今日
サムライ 侍 シャムライ 守る者
アガタ 県 アグダ 集団
ヌシ 主 ナシ 長
ツチ 土 ツィトゥ 土
カネ 金 カネー 買う
カワ 皮 カファ おおう
コドモ 子供 コタン 小さい
ワラベ 童 ワラッベン 男の子
コエ 声 コル 声
クサ 草 クシュ わら
ミズ 水 ミツ ジュース
クサリ 鎖 ケセリ つながり
サラ 皿 セイル 丸い入れ物
ヤリ 槍 ヤリ 射る
アシタ、アサッテ 明日、明後日 アティド 未来
ハズカシメ 辱め ハデカシュム 名を踏みにじる
ミカド 帝 ミガドル 高貴なお方
ネギ 禰宜(神職) ナギッド 長、つかさ
ハフリ 祝(神職) カフリ 贖いをする者
ミササギ 陵(墓) ムトゥサガ 死者を閉ざす
アスカ 飛鳥(天皇の住居があった) ハスカ ご住居
ウケ、ウカ (古代日本語 食物) ウケ 食物
ミソギ 禊ぎ ミソグ 分別・性別
(注)書籍には、ヘブライ語表記も記載されているが省略した。また、上記に引用したのは名詞のみであるが、他にも動詞32個、形容詞他10個が掲載されている)
 これらを見てみると、音も意味も全く同じものや、微妙な違いはあるものの、単なる偶然とは思えないほど類似した単語もあり、素人目には、日本語とヘブライ語の関連性を強く感じてしまうものである。(中には、水とジュースのように、「それは違うだろ・・・」と思えるものもあるが)

 しかし、結論から言えば、
この程度の類似であるならば、偶然の範囲内で見られるものなのである。

 その根拠を、同じ日ユ同祖論系の書籍『日本書紀と日本語のユダヤ起源』の中から示してみよう。

 同書には、日本とヘブライ語の類似語として500例が掲載されているのだが、以下のものは、最初の40例の内、ある特徴をもった単語のみを抽出したものである。
『日本書紀と日本語のユダヤ起源』(ヨセフ・アイデルバーグ(著)久保有政(訳)/徳間書店/2005) P.154-159
番号 日本語 ヘブライ語
発音
表記 発音 意味
3 アイカ 哀歌 アイカ(アラム語) 苦痛、悲しみ、悲嘆
6 アンウン 暗雲 アーナン 雲
8 アッセイ 圧制 アッセイ 抑圧する
11 オウセン 横線 アーゼン 横にする
12 バレイ 馬齢 バル(アラム語) 文字通りには「息子」の意だが、他の語と合わさって使われる時、「年齢」も意味する。
15 ダハ 打破 ダハ 押しやる
16 ダッピ 脱皮 ダハ 押しやる
17 ダン 談 ドゥン 議論する、談話する
19 ガイライ 外来 ゲール 外来者、ユダヤ教への改宗者
20 ガイ 外 ゴイ 外人、外国人、見知らぬ者、民
21 ゴウドウ 合同 グード グループを作る
22 グンダン 軍団 グンダ(アラム語) 団、軍団
23 ホドウ 補導 ハダー 案内する、指導する、補導する
26 ハク 拍 ハケ 打つ、たたく
30 ハツアン 発案 ハツァア 発案、提案
31 ハツイ 発意 ハツァア 発案、提案
33 ヘイユ 平癒 ハーヤー 病が治る
37 ヒン 品 ヘン 恵み、美、品
39 ホウキ 法規 ホウク 法律、規則、習慣、規制
40 ホウカン 法官 ホウカン 法律にたずさわる人。この言葉はヘブル語にないが、ヘブル語として可能な言葉である。ホウク(法)+職業を示す接尾辞アン=ホウカンとなり、判事や法律家の事。
(注)アラム語とヘブライ語は方言程度の違いしかない。ヘブル語はヘブライ語のこと。
 既にお分かりだと思うが、上記表で抽出した「ある特徴」とは、日本語が音読みのものである。

 音読みは、中国の漢字の読みが日本に定着したものであり、比較的新しい日本語で、大和言葉と言われる古い日本語ではない。

 その
音読みでさえ、ヘブライ語との類似の単語を探せば、上記のように見つかってしまうのである。

 なお、上記表の左側の番号は、本書で使用されている番号であり、抜けている番号は訓読みのものである。つまり、
40例までで言えば、その半分が音読みになっているのである。

 もし、日本語とヘブライ語の類似単語の多さが、日ユ同祖論の根拠となりえるのなら、当然、訓読みにのみ類似単語が頻出し、一方、音読みの方は僅少でなくてはおかしい。

 
結局、異なる言語間で、類似の単語を探そうと思えば、偶然の範囲内でいくらでも見つかるものであるから、音読みでも訓読みでも見つかってしまうのである。


 また、上記では、日本語とヘブライ語のケースのみ見たが、「日本語と○○語の類似の単語を調査したら、こんなにありました!」という報告はよくあるものである。

 例えば、これまた日ユ同祖論系の書籍である『新訂 日本民族秘史』には、マオリ語と日本語の類似の単語が約60例掲載されている。マオリ語は、ニュージーランドの原住民であるマオリ族の言葉である。
『新訂 日本民族秘史』(川瀬勇/川瀬コーポレーション/1972) P.68-71
日本語 マオリ語
表記 発音 意味
火 アヒ 火
宅の タク 私の
網 アミ 物を集めること
網引き アミキ 集める
穴 アナ 穴
アノー アノ まだ、尚
アラー アラ 驚きを表す
ありありと アリ 見える、はっきり
所在(※管理人注:「所在」となっているが「在りか」の方が相応しい。 アリカ 神のみにわかる所、所在
川 アワ 湿った所
ハバカリ(昔は小川を便所として流した=カワヤ) アワカリ 小川の岸
エヘー エヘ 驚きの言葉
ハアハア ハ 呼吸
入れ ハエレ 来い、入れ
入れ ハエレマイ 歓迎、入れ
ハレル ハレ おできの破裂
ハル ハレハレ 攻撃
引く ヒキ 引き上げる
廻る フリ 廻る
振る フル 振る
腹(フク) プク 腹
満腹 プクプク 満腹
イヤー イア しかし
討とう イトウ 復讐
祈り イノイ 祈り
火(カ) カ 火をつけること、燃えること
会食、おかい カイ 食する
掻く カク 掻く
噛む カム 食する
歯がカチカチ カチカチ 良く噛む
進退谷(キワ)まる キワ 目をつぶる、真暗、悲しき心配
子 コ 女
米 コメ あごを動かす
コレコレ コレ 否定
古老 コロ 老人
甲羅 コーラ 海老
舞い マイマイ ダンスのこと
丸 マル 影、封印、日よけ、サイン
(包(パオ)=蒙古語) パ 一角、村落
原 バラ 森林を切り開いた所
ポカポカと穴があく ポカポカ 多くの穴のあいた布
別れる ワカレレ 分かれる、不一致
竹、嶽 タケ 根、山
叩く タタク 後ろでこわがらす
畳 タタミ おさえつける、たたむ
玉 タマ 息子、種子
種 タネ 男子、父
垂れる タレ つりさがる
旦那 タンナタ 男
どけ トケ 去れ
突き ツキ 攻撃
蘭 ウイウイ イのごとき植物
討つ ウト 復讐すること
 御覧の通り、明らかに「そりゃ、こじつけだろ」と思えるものもあり、微妙なものが多い類似語集ではあるが、それでも、「穴」、「アラー」、「掻く」等、音と意味が全く同じものも掲載されている。

 やはり、類似の単語など、探せば見つかるものだからである。


 さらに、ダメ押しで、もう一例見ておこう。

 「Yahoo!知恵袋」に、「日本語と英語の類似性; 偶然?」という投稿があり、そこでは、日本語と英語の類似語等を上げて、それが偶然なのかどうか質問がなされている。

 そして、そこであげられている類似語につき、特に似ていると思えたものを抽出したのが以下の表である。
Yahoo!知恵袋「日本語と英語の類似性; 偶然?」より
日本語 英語
発音 表記 発音 表記
ボウ 棒 バー bar
フル 降る フォール fall
セッテイ 設定 セット set
カブル 被る(帽子等を) カバー cover
ハタク はたく ヒット hit
ラク 楽 ラックス lax
モリド 盛土 マウンド mound
ニイ 新 ニュー new
リン 輪 リング ring
ワタツミ 海神(※「ワタ」が「海」を意味し、「ツ」は「の」と同じ助詞、「ミ」は「霊」を意味する。 ウォーター(※ワーターと読めば近い) water
※該当ページには記載されていないが、他にも、「そう」と「so」、「だるい」と「dull」などもあるだろう。
 このように、日本語と英語ですら、似た音と意味の単語を探せば、見つかってしまうものなのである。





 以上、異なる言語間で、類似の単語を探そうと思えば、偶然の範囲内でいくらでも見つかるもの。

 よって、2つの言語間で類似の単語を多く見つけたからと言って、それが言語間の近親性を示すことにはならないのである。


 さて、上記では単語単位の類似について見て来たが、それが、もう少し長い、複数の単語で形成された歌等のケースではどうだろうか。次に、(その16)では、そのケースについて見て行きたい。



2013.8.20新規

    精神世界
   (※「AIRランキンク」゙さんの精神世界ランキング。クリックすると、当HPに一票入れたことになります)






















教祖様にツッコミを入れるページ