論点(その2)

 当記事では、(その1)に引き続き、「論点」というものを理解してもらう為に具体例を用いて解説して行きたい。ただし、今度は、より、実際的な例である。



2.論点とは(具体例A・・・とある夫婦のやりとり(1))

 まずは、下記の夫婦のやりとりを御覧いただきたい。

 なお、こちらのやりとりは、2ちゃんのまとめサイトに掲載されていたもので、具体例として使用するのに良い例だと思ったので使用させていただいた。

 また、投稿者本人も
「ス、スマソ(ー ー;) 読み返すと確かに意味わからんかも 」と述べられているので、「実際にあったやりとり」というより、あくまで「単なる例」と割り切って御覧いただきたい。
既婚者の墓場」 → 「嫁『自分の言うことが常識だと決めつけるな! そっちも相当な非常識だ!私が犯人だと決めつけるな!』」より

先ほどの出来事。

嫁が持ってきて欲しいと言ったので、
会社から持ってきた本に、汚れがついていた。

俺「あ、汚れがついてる」
嫁「私じゃない」
俺「いや、私じゃないじゃなくて、あなたが持ってきて欲しいと
言って持ってきたものが汚れたんだから、
ごめんの一言ぐらいあってもいいんじゃない?」
嫁「私が汚したんじゃないのに、なぜ謝らなければならない?
私がやったと決めつけるな!」
←逆ギレ
俺「誰が汚したとかじゃなく、持ってきてもらったものが汚れたんだから
一言ごめんと言うのが常識じゃないか?なんでそこで逆ギレする?」
嫁「自分の言うことが常識だと決めつけるな!
そっちも相当な非常識だ!私が犯人だと決めつけるな!」
俺「誰が犯人とかじゃなくry
以下ループ。

なあ、これって俺が、間違ってる?

常識だと思うことを嫁に言うと、いつもこうなので、
もう最近は本当に自分が正しいのかわからなくなってきたよ…


 御覧の通り、嫁さん(*)の頼みで会社から借りて来た本に、俺さん(*)が汚れを発見したことから二人のやりとりが始まる。
(*) 「嫁さん」、「俺さん」
「俺」、「嫁」と敬称を付けずに表記するのも失礼な気がするし、また、特に「俺」の方は一人称で管理人と混同して分かりづらいと思うので、あえて、このような表記とする。
 噛み合っていない夫婦の会話であるが、二人のやりとりを「論点」を意識しながら順に見て行こう。

 まず、本が汚れているのを発見した俺さんは次のように述べる。
「あ、汚れがついてる」
 単に事実を述べただけであるが、この主張に対して議論するとすれば、例えば、次のような「論点」が考えられるだろう。
<論点@> 汚れがあるか否か
<論点A> 汚れが借りた後、ついたか否か
 <論点@>の方は、「俺さんが汚れだと思ったものは、実は、単なる模様だった」という場合であり、一方、<論点A>の方は、「借りた時点で既にあった汚れであって、借りた後に付いた汚れではない」という場合である。

 実際の返答としては、それぞれ、以下のようなものとなる。
<論点@> 汚れがあるか否か
  → 
「汚れって、それ、カバーの模様だよね?」

<論点A> 汚れが借りた後、ついたか否か
  → 
「その汚れって、借りて来た時には既に付いてたわよね?」

 それでは、俺さんの「あ、汚れがついてる」に対しての、嫁さんの返答を見てみよう。
「私じゃない」
 その本を手にして読んでいたのは嫁さんであり、もし、その本に汚れが付いているのなら、その原因は嫁さんである可能性が高い。

 当然、俺さんもその可能性が高いことを認識しているだろうし、一方、嫁さんは、そのような認識を持たれていることを想定し、相手が指摘して来る前に、「私じゃない」と主張して予防線を張ったと言える。

 そして、この返答での「論点」は、
<嫁論点@>「汚れを付けたのは嫁さんか否か」ということになる。


 続いて、嫁さんの「私じゃない」という主張に対する俺さんの返答は次の通りである。
「いや、私じゃないじゃなくて、あなたが持ってきて欲しいと言って持ってきたものが汚れたんだから、ごめんの一言ぐらいあってもいいんじゃない?」
 俺さんはまず、「いや、私じゃないじゃなくて」と言って、「汚れを付けたのは嫁さんか否か」という「論点」で争うのは避けたようである。

 そして、続けて、「あなたが持ってきて欲しいと言って持ってきたものが汚れたんだから、ごめんの一言ぐらいあってもいいんじゃない?」
別の「論点」が提示されることになる。

 意訳すると以下の通りである。
嫁さんが借りるよう要請しなければ本は汚れることはなかったので、嫁さんには責任の一端はあることになる。よって、嫁さんは謝るべきである。
 ここでの「論点」は、<俺論点@>「借りた本が汚れた場合、汚したか否かに関わらず、本を借りるよう要請した人が謝るべきか否か」となる。

 通常、相手から、俺さんのような主張をされたら、
「は?何言ってんの、コイツ??」等と思い、同意することはないだろう。

 俺さんの主張は、明らかに無茶振りなのだが、その無茶振りに対する嫁さんの返答は以下の通り。
「私が汚したんじゃないのに、なぜ謝らなければならない?
私がやったと決めつけるな!」
 ここで提示された「論点」は次の2つとなる。
<嫁論点A>本を汚していない者が謝るべきか否か
<嫁論点B>俺さんが、嫁さんが汚したと決め付けているか否か

 <嫁論点A>は先に俺さんから提示された、<俺論点@>「借りた本が汚れた場合、汚したか否かに関わらず、本を借りるよう要請した人が謝るべきか否か」という「論点」を包含している。
「汚したか否かで責任が生じるか否かが決まるのであって、それ以外では責任は生じない」という旨の主張だからだ。

 ただ、<嫁論点B>の方は、
論理が飛躍(*)していると言わざるを得ない。何故、俺さんが「あなたが持ってきて欲しいと言って持ってきたものが汚れたんだから、ごめんの一言ぐらいあってもいいんじゃない?」と主張したことが、「嫁さんが汚したと決め付けていること」になるのか説明がなく不明である。
(*) 「論理が飛躍」

 例えば、
根拠と共に提示された結論が、その根拠から当然に導き出されるものでない場合
(例)A君は貧乏である。よって、A君が集金袋を盗んだ犯人である。
 この例では、「A君は貧乏」という根拠だけで、「A君が犯人」という結論が導き出されている。
 当然、根拠としては不十分過ぎ、せいぜい、その動機を説明できたに過ぎない。その根拠で主張するには、飛躍した結論だと言える。

 また、例えば、
結論に至った過程・根拠が不明な場合
(例)A君は貧乏である。よし、じゃあ俺は、カレー屋さんを始めよう。
 この例では、何故、A君が貧乏だったら、カレー屋を始めることになるのか全く分からない。
 前提としている事実「A君は貧乏」から、かなり飛躍して、結論「俺がカレー屋を始める」が主張されていると言える。

 もちろん、この結論に至った思考の経緯や根拠を確認してみれば、「なるほど!」と思える場合もあるし、また、そうでない場合もある。


 この、論理が飛躍した、その間の思考を推測すると、おそらく、嫁さんは次のように考えたのではないだろうか。
こんなに謝れって言うのは、私が汚したと思っているからだわ。
私を犯人にして許せない!
 「俺さんが、嫁さんが汚したと決めつけている」という主張について、上記会話だけでそのような断定的な結論が出るはずもない。よって、まず間違いなく、単なる嫁さんの推測に過ぎないのだから、「私がやったと決めつけ」ていると決めつけているのは、むしろ、嫁さんの方であると言える(※ただし、これまでの経験上、そう結論づけるのが妥当だったと言う場合も考えられるが)。

 この辺りから、二人の議論はどんどん怪しくなって行くのだが、次の俺さんの発言は以下の通り。
「誰が汚したとかじゃなく、持ってきてもらったものが汚れたんだから
一言ごめんと言うのが常識じゃないか?なんでそこで逆ギレする?」
 まず、「誰が汚したとかじゃなく、持ってきてもらったものが汚れたんだから一言ごめんと言うのが常識じゃないか?」というのは、先に俺さんが示した<俺論点@>「借りた本が汚れた場合、汚したか否かに関わらず、本を借りるよう要請した人が謝るべきか否か」が再提示された形である。

 嫁さんは、
「汚した者が謝るべきで、それ以外の者は謝る必要はない」と考えているのに対して、俺さんは、「借りた本が汚れた場合、汚したか否かに関わらず、本を借りるよう要請した人が(も)謝るべき」と考えているのだから、二人の考えは真っ向から対立している。

 そして、俺さんの次の言葉が、「なんでそこで逆ギレする?」 であり、新たな論点、
<俺論点A>「この状況がキレていい状況か否か」が提示されることになる。

 続いて、これらの発言に対する嫁さんの返答は以下の通りである。
「自分の言うことが常識だと決めつけるな!そっちも相当な非常識だ!
私が犯人だと決めつけるな!」
 ここでは、まず、「自分の言うことが常識だと決めつけるな!そっちも相当な非常識だ!」という発言により、新たに次の2つ論点が追加されている。
<嫁論点C>俺さんが、自分の言うことを常識だと決め付けているか否か
<嫁論点D>俺さんが相当な非常識か否か
 また、続く、「私が犯人だと決めつけるな!」は、<嫁論点B>俺さんが、嫁さんが汚したと決め付けているか否か」の再提示である。

 そして、投稿された文章では、二人のやりとりとして最後に、
俺「誰が犯人とかじゃなくry
以下ループ。
と記載され、収集が付かなくなって行った様が表現されている。




 以上、二人の間で様々な「論点」が提示されたが、どの「論点」も結論を出されることがなかったどころか、まともな議論すらなされないまま終了してしまったようである。

 似たような夫婦のやりとりは、よく聞くものであるが、次に(その3)では、上記のやりとりに、どのような問題点があり、かつ、どうすれば良かったのかを考えてみよう。



2014.03.11新規

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