論点(その3)
 ※当記事は(その1)(その2)からの続き


 当記事では、(その2)で見た夫婦のやりとりに、どのような問題があり、かつ、どうすれば良かったのかを考察して行きたい。


3.論点とは(具体例A・・・とある夫婦のやりとり(2))

 (その2)で見た夫婦のやりとりでは、互いに「論点」を提示するだけで、結局、どの「論点」も合意がなされることのないままで終了してしまった。

 そして、彼らがあげた「論点」は次のものであった。
<俺論点@>借りた本が汚れた場合、汚したか否かに関わらず、本を借りるよう要請した人が謝るべきか否か

<俺論点A>この状況がキレていい状況か否か
<嫁論点@>汚れを付けたのは嫁さんか否か

<嫁論点A>本を汚していない者が謝るべきか否か

<嫁論点B>俺さんが、嫁さんが汚したと決め付けているか否か

<嫁論点C>俺さんが、自分の言うことを常識だと決め付けているか否か

<嫁論点D>俺さんが相当な非常識か否か
 こうして見てみると、俺さんから提示された「論点」は、基本的に<俺論点@>「借りた本が汚れた場合、汚したか否かに関わらず、本を借りるよう要請した人が謝るべきか否か」のみだと言える。実際の二人のやりとりでも<俺論点@>が繰り返し主張されていた。

 そして、<俺論点A>の方は、「論点」として争いたいと言うより、嫁のキレた状況を落ち着かせたい意図があったのだろう。(※「逆ギレ」という言葉の選択に問題があったとは思うが)

 一方、嫁さんの方は、最初は、
「本の汚れ」に関連する「論点」が提示されていたものの(嫁論点@、A)、徐々に、「俺さん本人」に「論点」が移って行っていることが分かる。

 このように、提示された「論点」を順に片付けていかずに、どんどん新たな「論点」が提示されるばかりか、さらに、議論の対象も追加されれば、話がまとまらずに収集が付かなくなるのも当然である。よって、
(1).「論点」は基本的に、一つずつ順に片付けて行くべき
と言える。「論点」は基本的に、一つの「論点」が終了してから次の「論点」へと議題を移して行くべきなのである。

 ただし、どうしても合意を得られない場合、もしくは、現在、議論している「論点」の前提となる「論点」が未解決であることが分かった場合等、現在の「論点」を保留し、別の「論点」へと移行しても構わない。

 また、(その2)で見たやりとりでは、俺さんが本に汚れを発見した後、嫁さんが「私じゃない」と主張して<嫁論点@>「汚れを付けたのは嫁さんか否か」が提示された。

 しかし、俺さんは、「いや、私じゃないじゃなくて」と発言して、その「論点」で話し合うのを避け、新たな「論点」である<俺論点@>「借りた本が汚れた場合、汚したか否かに関わらず、本を借りるよう要請した人が謝るべきか否か」を提示していた。

 もし、先に<嫁論点@>「汚れを付けたのは嫁さんか否か」できちんと議論をして結論を出していたら、その後、嫁さんから次のような批判が繰り返されることもなかったであろう。 
「私がやったと決めつけるな!」

「私が犯人だと決めつけるな!」
 ただし、原則論としてはそうなのだが、やりとりを見る限り、嫁さんはかなりクセがある方のようなので、<嫁論点@>「汚れを付けたのは嫁さんか否か」という、嫁さんの責任に関わる「論点」で争った場合、やはり同様に、収集の付かない状況になってしまった可能性が十二分に予想される。

 おそらく、俺さんも過去の経験からそのように考え、あえて、
<嫁論点@>「汚れを付けたのは嫁さんか否か」で争うことを避けたのだろう。

 ただ、俺さんの「いや、私じゃないじゃなくて」という発言は、この<嫁論点@>を棚上げにする意思表示としては分かりづらく、嫁さんが
「俺さんは、私が犯人だと決めつけている」と思い込む要因の一つになったと思われる。(もちろん、嫁さんが考えた通りで、「俺さんは嫁さんを犯人だと思っているが、明確な証拠を提示できない為に、別の理由で謝らせようとした」という可能性もある)

 よって、
(2).「論点」を棚上げにする場合は、明示すべき
たと言える。嫁さんの「私じゃない」に対する発言としては、より明確に、次のようなものが良かったであろう。
(1).「待って。誰が汚したかという話は、ちょっと置いておこう」

(2).「嫁さんが汚したんじゃないって言うんだね。分かった。それはそれとして・・・」
 (1)の方は、「論点」を棚上げすること明示したものである。しかし、この嫁さんの場合、棚上げにしただけでは納得せずに、結局、同様のやりとりになってしまう可能性もある。よって、(2)の方は、嫁さんの「私じゃない」という主張を認識したことをより明確に意思表示する形にした(この嫁さんの場合だと、これでも、もめずに済む確証はないが)。

 ちなみに、このような議論におけるルールを守らずに、
「ある『論点』で争うのが不利だと判断した場合、あえて、『論点』を棚上げにすることを明示せずに、別の『論点』を持ち出して誤魔化す詭弁」というのは、世間で良く見られるものである。

 例えば、次のようなケースである。
○Bさんは、Aさんに「あなたは言行が一致していない。いつも、口先だけの綺麗事を言うだけだ。自分で言ったことを実行することもないどころか、それに反する行動も平気でする。言うだけなら、誰にでも出来ますよ」と批判した。

○そして、Bさんは、Aさんのこれまでの発言と、それに反する行動を列挙し始めた。

○Aさんは、全て事実なのでBさんの言っていることに反論することもできない。

○そこで、Aさんは
「そういうお前はどうなんだ!」とBさんのことを批判し出した。
 このケースでは、最初の「論点」は「Aさんが言行一致していないかどうか」である。

 そして、Bさんが実際のAさんの言行をあげて根拠を示したのに対して、Aさんの返答が「そういうお前はどうなんだ!」である。

 この返答での「論点」は
Bさんが言行一致していないかどうか」であり、何の断りもなく「論点」が変更されている。Aさんは、勝手に「論点」を変更することによって、先の「論点」について結論を出すことを避けて誤魔化したのである。

 このように、議論において自分が不利な場合、勝手に「論点」を変更するのは良く見られる詭弁である。皆さんも同様のことをされた経験があるかも知れない。

 本来、Aさんは、まず、最初の「論点」である「Aさんが言行一致していないかどうか」について、言行一致していないことを認めるのか、認めないのか、それとも、結論を保留するのかを明示してから、別の「論点」を提示しなければならない(もちろん、認めない場合や結論を保留する場合は、その理由も明示する必要がある)。

 一方、勝手に「論点」を変更された場合は、例えば、次のように発言して、先に最初の「論点」を片付けるよう要請すべきである。
なるほど、Aさんは、私も言行不一致だと言うのですね。

ただ、その論点を話し合うのは、先に私が提示した「あなたが言行不一致かどうか」という論点を片付けてからにしましょう。

この論点についてあなたはどう考えるのですか。言行不一致であることに同意するのですか、しないのですか?もし、同意しないと言うのなら、きちんと根拠を示して反論して下さい。
 このように、勝手に「論点」を変更されるのを阻止せずに、相手の「そういうお前はどうなんだ!」という言葉に乗せられて、「私は言行一致してますよ!」などと反論してしまえば負けである。

 それでは、相手の詭弁に上手く乗せられて「論点」が変更されてしまうことになり、本来の目的であった
「相手が言行一致していなこと」を認めさせることが出来ずに、有耶無耶にされてしまうことになる。



 ※(その4)に続く。



2014.03.18新規

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