『宇宙からの大予言』にツッコミ!(その1) ・・・ 松原照子さま

書 名  『宇宙からの大予言 〜迫り来る今世紀最大の恐怖にそなえよ』
著 者  松原照子
出版社  現代書林
価 格  820円(税別)
 出版年月  1987年1月

●本書概要

 ソ連によるアフガニスタン侵攻、サダト大統領暗殺、フォークランド紛争、メキシコ大地震、JAL羽田沖墜落事故、御巣鷹山墜落事故等々、数々の予言をズバリ的中させ、驚異的な的中率を誇る松原照子様が予言する「今世紀最大の恐怖」とは・・・

 (注)本書は1987年に発売されたもの。よって、「今世紀」とは前世紀である20世紀のこと。

●詳細&ツッコミ

 松原様がメディア等で紹介される際、必ず
「東日本大震災を予言した」というレッテルが付いてくるのであるが、これについては既に『検証 大震災の予言・陰謀論』(ASIOS/アンドリュー・ウォールナー/文芸社/2011/11)にて早々にツッコまれ済である。

 しかし、未だ、そのレッテルが当然のように出回っているようなので、本書へのツッコミを入れる前に『検証 大震災の予言・陰謀論』の内容を紹介しておきたい。


 まず、松原様が「東日本大震災を予言した」とされるのは、東日本大震災発生の約1ヵ月前、
2011年2月16日に自身のブログ「幸福への近道」においてなされた次の発言による。
ブログ「幸福への近道」 2011.2.16
やはり太平洋側は動く気配がムンムンしています。
陸前高田」と云う地名が声にならない会話を 自分にしています。
どこにあるのだろうと 探してみると 見付かった。
指で感じ取ろうとしたが 
期待ほど感じなかったが 釜石辺りが赤く見えた。
東和と書かれている場所辺りが気になった。
今度
揺れると広範囲に思える。
岩手・秋田・山形・宮城・福島・茨城 これだけ書けば当たるだろうと思える県名だが 書かずにはおれない思いになります。
目の前に5の数字が先程から見えて仕方がない
千葉も 神奈川も近く揺れると思われるし 東京・埼玉も「なんだこれ」私がおかしいのか群馬も 栃木も 長野も いつ揺れてもおかしくない事を地図は語ってくれているだけに 私自身 今日は地図を見る力が薄れているのかと 心配になってしまうくらいだ。
もしかすると近日中に何回か揺れを感じるか かなり広範囲なのかもしれないと思った。



(注)文字に色を付けたのは管理人(以下同様)
当時、該当ブログは全て無料で誰でも参照できたが、現在、最新の内容以外の過去のものは有料会員にならなければ参照できない。
 該当の予言は、発生日の記載はないものの、予言がなされたのが2011年2月16日という東日本大震災の約1ヵ月前というタイミングに加え、東北地方の県名を中心に発生時によく目にした「陸前高田」という地名があり、かつ、「揺れると広範囲」とあって、東京や千葉、栃木等の県名も見える。

 ただし、「陸前高田」については結局、「期待ほど感じなかった」と否定的発言をしている上に、「目の前に5の数字が先程から見えて仕方がない」とあるが、発生日時に「5」は全く関係なく、予言としては微妙さも感じ取れる内容となっている。(※「5」を何かにコジツケようと思えば、いくらでもコジツケ可能であろうが)

 そして、微妙な箇所があるものの、このブログの内容を見れば、
「松原様が東日本大震災をスバリ予言していた!」と思っても仕方がない内容だと思う。

 しかし、実際は、ご多分にもれず、そんな大層な話ではない。『検証 大震災の予言・陰謀論』でツッコまれている内容を見て行こう。
『検証 大震災の予言・陰謀論』 (ASIOS/アンドリュー・ウォールナー/文芸社/2011.11) P.180-181
下手な鉄砲も数撃てば当たる

 今回の検証にあたり、松原氏が2010年9月から始めたブログ「幸福への近道」と、それ以前の旧サイト「近未来研究所」、さらには過去のWEBベージが一部保存されている「Internet Archive」も使用し、
彼女がこれまで書いてきた予言の数々を精査した。その結果わかったのは、「下手な鉄砲も数撃てば当たる」という予言の仕組みである。2月16日の記事だけを読めば、いかにすごい予言がなされたかのように思えるが、実際は同じようないことを年中書いていたことがわかるのだ。
 それは松原氏が予言した地震発生地域を集めてみるとよくわかる。次に示す地名は、
震災前の半年間でどれだけの地名が予言されていたかをリストアップしたものである(2月16日の記事を除く)。

北海道、岩手県、宮城県、新潟県(六日町)、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都(神津島、小笠原諸島)、千葉県、長野県、静岡県(天城、伊豆諸島)、愛知県(渥美半島)、石川県、大阪府(生駒山)、四国沖、長崎県(五島列島)、熊本県、鹿児島県(大隅諸島、薩南諸島)、沖縄県(琉球諸島)、アメリカ(カリフォルニア、ロサンゼルス)、ロシア、中国(山東地方)、西インド諸島、インドネシア

 記載されている通り、先述の2月16日の予言を除き、松原様が地震の予言をした地名は震災前の半年間で上記の通り。

 まさに「下手な鉄砲も数撃てば当たる」で、
「これだけ予言してれば、そりゃ、いつか当たるよね」という話なのである。

 さらに続きを見てみよう。
『検証 大震災の予言・陰謀論』 (ASIOS/文芸社/2011.11) P.181-183 (※上記からの続き)
 ご覧の通り、北海道から沖縄までの多くの地域が列挙されている。さらに期間をさかのぼって記事が保存されている2005年以降に挙げられた地名となれば、もっとすごいことになる。

  
〜(大量の地名が記載されているが省略)〜

 いかがだろう。
呆れたことに日本全国47都道府県すべてが網羅されている。これだけ列挙されれば、どこかの地域が当たってもおかしくない
 しかも
松原氏の予言の多くは、いつ起きるのかという時期が示されていないうえに、同じ地名を何度も懲りずに挙げ続けるという特徴がある(陸前高田や釜石も2005年に登場済み)。
 たとえば2月16日の予言記事で挙げられていた
東北地方は、確認できる限り、初出は2005年、それからの6年間で120回以上もその地名が登場する。関東地方も初出は6年前で、登場数は実に170回を超える(単独で挙げられることはほとんどなく、たいてい様々な地名とセットで言及される)。
 これらを知れば、松原氏が年中、「地震が起きるぞ」と言っていたことがよくわかるだろう。

 このように、地震予言の対象としてあらゆる県名、都市名を挙げ続けて来たものの一つが、東日本大震災を予言したとされる2月16日のブログ記事なのである。

 また、当記事では引用しないが、『検証 大震災の予言・陰謀論』では、松原様が2007年7月に放送されたTV番組を見て、
「三陸沿岸地域で30年以内に大地震が起きる確率は99%」という予測がなされていたことを知っていたことが指摘されている。

 もともと大地震が発生する可能性が高い地域に対して、発生時期も規模も不明な予言をし続けていれば、いつか的中するのは当然のことだと言えるだろう。


 以上で、松原様が
「東日本大震災を予言した」とされる話が、実は大したものではないことを理解するには十分であると思われるが、さらに、補足として、松原様が東日本大震災を予言したとされる2月16日以降3月11日までにどのような地震予言をしていたのかも見ておこう。

 まずは、2月16日の4日後になされた松原様の地震予言である。
ブログ「幸福への近道」 2011.2.20
今年の地震の傾向は揺れると続く事です。
今年も
宮城県やその周辺の県は良く揺れる事でしょう
日本海側より 太平洋側が揺れる年になると思います。
それと、
鹿児島も4を超える揺れも起きる事でしょう。
東京も揺れる周期に入ったと思っています。
年間200回を超す勢いです。
皆様も1クラスから注意していて下さい。
千葉は揺れの順位をグーンと上げそうです。
今年は千葉は地震の当たり年とも 今日は思っています。
4クラスは4回以上 覚悟していて下さい
石川 新潟方面は今日 感じるところでは 少し落ち着き始めている気がしています。
九州地方は地下の活動が活発化していると思われますので 何処へ
このエネルギーが集まるかが これらかの課題です。
今年は今日の時点では胸騒ぎがしていませんが 
この5年の間に駿河トラフから四国沖の南海トラフにかけてフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込んでいる何処かで マグニチュード8クラスが起きる可能性が高くなっているのが心配です。
7クラスは避けられないとも思ってしまいます。
これからは地図をなるべく見るようにしますので、私の地震予測を参考にして下さい。
ただ 浅間山が元気になりつつあるのが心配です。

 御覧の通り、もし本当に東日本大震災を予知できていたのなら、2011年3月11日に近づけば近づくほど東北地方関連の地震に関する警告が増えそうなものだが、全くそんなことはない

 当該記事でも東北地方に触れてはいるのだが、「宮城県やその周辺の県は良く揺れる事でしょう」程度。のんきなものである。

 また、東日本大震災で、大規模なコンビナート火災や液状化現象等でかなりの被害が出た千葉については、「4クラスは4回以上 覚悟していて下さい」程度である。全然、そんな程度の覚悟では済まなかった。

 さらに、上記で、とりわけ巨大地震の予言がなされているのが次の内容である。
この5年の間に駿河トラフから四国沖の南海トラフにかけてフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込んでいる何処かで マグニチュード8クラスが起きる可能性が高くなっているのが心配です。
7クラスは避けられないとも思ってしまいます。
 「駿河トラフから四国沖の南海トラフにかけてフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込んでいる何処か」とあるので、場所は駿河沖以西の太平洋側

 松原様はその地域に対して、
5年以内にマグニチュード8、もしくは7クラスの大地震が発生することを予言しているのである。

 目前に迫った東日本大震災を予言せずに、
西日本の大地震を予言しちゃってる松原様(笑)

 まあ、「5年以内」だから、こちらの予言はまだ当たる可能性は残されているのだが、メディア等でも大地震がいつ起きてもおかしくないとさんざん主張されているところに対して、地域も時期も広範囲で曖昧な予言したところで何の価値もないと言えよう。


 続いて、この6日後の2月26日のブログである。
ブログ「幸福への近道」 2011.2.26
ニュージーランド大地震の映像を見ているだけで胸がつまります。
トンガ海溝付近はやはり今後の要注意です。
2009年9月サモア諸島沖に大地震が発生し 次はニュージーランドでした。
メラネシアと書かれている辺りからマレー諸島は これからも気を付ける地位です。
特にフィリピンプレートが動き始めたのを感じます
琉球海溝・ジャワ海溝も気になります
どうやら 海底火山の山脈が活発になっているからだと思います。
チリで起きたM9.5の地震を上回る巨大地震がやって来る日が近付いている気がしてなりません
その場所はどこなのか、感じさせて下さる事を願わずにはおれません。


(注)「地位」は原文のママ。おそらく「地域」。
 ここで出て来るのも「フィリピンプレート」で、やはり関係するとしたら西日本。「琉球海溝」というキーワードも出てくるが、東北地方とはさらに関係がない。

 また、「チリで起きたM9.5の地震を上回る巨大地震がやって来る日が近付いている気がしてなりません」とあるが、前の文章に「ジャワ海溝」等とあることを鑑みると日本に限定した話ではない上に、東日本大震災はM9.0だった。


 件の2月16日のブログから東日本大震災が発生した3月11日までで、地名やプレート名等が登場して、広範囲ながらもある程度どの地域に地震が発生するかを予言しているのは、上記2月20日と2月26日の2件のみである。

 そして、 該当の期間で地震に触れていると言えば、他に次の1件があるくらいである。
ブログ「幸福への近道」 2011.2.25
我国もニュージーランドと同じ 大地震がいつ起きてもおかしくない時期に入ってしまった
恐怖心は外し 日頃から防災対策と何かあった時の為の連絡先 そして日頃の家での生活状態を知らせておく事を どうか忘れずにいて下さい。


 先にも述べた通り、2011年3月11日に近づけば近づくほど東北地方関連の地震に関する警告が増えそうなものだが、全くそんなことはなく、むしろ、西日本の太平洋側の大地震を5年間という広い期間で予言している程度なのである。

 ちなみに、日本に発生する巨大地震については、著書『宇宙からの大予言』でも予言している(詳細は後に触れる)。もちろん、その予言もハズれたのだが、1987年以前から
「巨大地震が来る」とか、「今世紀最大の恐怖」などと言い続けているのである。




 以上、松原様が当てたとされる東日本大震災の予言は、フタを開けて見れば御覧の通り。ただの「下手な鉄砲も数撃てば当たる」に過ぎない。

 似たような漠然とした地震予言を何度もし続けた結果、偶々、マッチするものが出て来ただけなのである。

<参考> 2月16日のブログの改竄説について

 ネットで検索してみると、松原様の2月16日のブログ記事の内容が
後付けの改竄だという意見が散見されるようである。

  ※例えば、「Yahoo!知恵袋「予言者・松原照子さんのブログでの震災予知について。。」」

 どうやら、2月16日を含め2月20日、25日、26日のページが、
震災翌日の3月12日の午前に、わずか一分程の間に一気に更新されていたらしい。なお、該当のブログ記事は全て上記で引用したもので、地震関連の記事である。

 松原様はこの件について、震災後に新しく「地震・自然災害」カテゴリーを開設し、大地震に関連した記事をそのカテゴリーに移動した為であると説明しているようである。

 また、上記で引用した『検証 大震災の予言・陰謀論』では、「改竄という強い主張に見合うだけの証拠が今のところそろっていない」(P.181)とのことで改竄説には立っていない。


 続いて(その2)では、松原様の著書『宇宙からの大予言』の予言内容を見て行きたい。



2014.12.02 新規

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そもそも、曖昧な地震予言をし続けて、いったい何の役に立つと思ってるんだろうナ。