『龍蛇族直系の日本人よ!』にツッコミ!(その5) ・・・ 浅川嘉富さま
※当記事は、(その1)(その2)(その3)(その4)からの続き



 (その2)〜(その4)と、トンデモ話を真に受けてしまっている浅川様にツッコミを入れて来たが、当記事では、論理面を中心に個別のツッコミを入れて行きたい。




 まず、本書のプロローグには、浅川様による「事前のお断り」が記載されているのだが、それを見てみよう。
<P.16>
 事前にお断りしておきたいのは、本書は神話の解釈や神名の記述にかんして学問的な正確性を追求するものではないという点である。日本神話でいえば、神々の名称や神話の内容一つとってみても、『古事記』と『日本書紀』には多くの相違点が見受けられるように、定説といったものはあってなきがごとくであることは、読者も先刻ご承知の通りである。

※管理人注:文字に色を付けたのは管理人(以下同様)。
 どうやら、「本書は神話の解釈や神名の記述にかんして学問的な正確性を追求するものではない」らしい。

 はぁ、そうですか。

 そして、この文章は次のように続く。
<P.17> (※上記からの続き)
 したがって、本書ではそうした細かい違いをあれこれ追求するのではなく、「神話に隠された真実や天皇家につながる神々の実体」に重点を置いて探っていきたいと考えているので、学問的見地から見れば「これは?」と思われる箇所が散見されるかもしれないが、そこは看過していただけたらと願っている

(※管理人注:文字に色を付けたのは管理人(以下同様)。
 「『神話に隠された真実や天皇家につながる神々の実体』に重点を置いて探っていきたい」ので、「学問的見地から見れば『これは?』と思われる箇所」「看過して」欲しいらしい。

 この二つの文章は、「ので」でつながっており、最初の文が次の文の理由になっているようなのだが、何故、
「神話云々に重点を置いて探っていく」ことが、学問的見地から問題がある箇所を見逃してもらうことになるのか、全く理解できない。

 また、先に引用した16ページの「定説といったものはあってなきがごとくである」という文章も、どうやら、見逃してもらうことを正当化する為に記載したものであると思われるが、仮に定説がなくても、
あり得ない話はあり得ないのだから、学問的見地から問題があることを正当化することになどなりえない。(そもそも、「定説といったものはあってなきがごとくである」というのも割り切り過ぎだと思うが)

 ていうか、こんなふうに最初に、問題がある箇所を見逃してくれるようお願いする本を、私は初めて見たよ(笑)

 それって、つまり、
自分の論証が、問題だらけで論証足りえていないことを自ら宣言しているのと同じことじゃないですかねぇ。。。


 そして、このように、自分の主張の問題点を看過するようお願いする浅川様だが、一方で、他のトンデモ本でもありがちなアカデミズムへの批判が見られる。
<P.2>
 退職後は旅の準備もそこそこに、人類がたどってきた歴史の真実を求めて世界各地に残された先史文明の遺跡の探索を始めることとなった。訪ねた遺跡は数知れず、マチュピチュやナスカを訪れた回数に至っては十指に余るほどである。結果、歴史学者や考古学者が唱える歴史がいかに嘘で塗り固められたものであるかを実感するところとなった
 浅川様は、「歴史学者や考古学者が唱える歴史がいかに嘘で塗り固められたものであるかを実感」しているらしい。

 自分の主張が学問的見地から問題があることが分かっているクセに、どうして、そんなことを実感できるのやら。。。

 また、

<P.90>
 エジプトの三大ピラミッドのエジプト人建造説やマチュピチュ遺跡のインカ人建造説、さらには何キロにも及ぶ巨大なナスカの地上絵のナスカ人建造説などが、いつになっても定説とされ続けていることも皆そのためである。
 
そうして「アカデミズムの傲慢さと愚かさ」について書いたらきりがないので、本書ではそこには深入りしないでおくことにする。
 「アカデミズムの傲慢さと愚かさ」(笑)

 自分のやってることは、トンデモ本や自称霊能者たちの主張を真に受けて、ろくな検証も出来ずに右から左へと情報を受け流しているだけなのにねぇ。。。

 むしろ、浅川様の傲慢さと愚かさを感じさせる文章である。

 そもそも、自分の主張の問題ある箇所を看過して欲しいなら、他人の批判などやめときゃいいのに。

 浅川様はどうやら、自分に甘く、他人に厳しいお人のようだ。





 次に、浅川様が見せる素晴らしい論理を見てみよう。
<P.58,59>
 古史古伝の代表格ともいえる『竹内文書』を見てみると、荒唐無稽とも思える内容が羅列されており、偽書とされるのは仕方がない面もある
 たとえば、『竹内文書』では、天皇家とその祖先である皇祖神の系譜は大きく四つの時代区分に分けられると述べている。

 
〜 (管理人注)時代区分の説明は省略 〜

 エジプトの歴史などを調べてみても、やはり、そこには歴史に残る古代エジプト王朝の時代よりさらに先に「神々の時代」や「半神半人の時代」が登場する。
神官マネトーの『エジプト史』に書き残された王名表には、数十代の神々の名が連なり、有史以前の長大な歴史が綴られている。エジプト学者はこういった歴史をすべて無視しているが、私はそれは間違いだと考えている
 
したがって、神武天皇の登場以前に天神七代や上古二十五代の神々の名が登場することはあり得る話である。私は神武より前の天皇は、ムー文明時代(第4章で説明)の統治者であったのではないかと考えている。ただ驚かされるのはその常軌を逸したタイムスケールの長さである。太古の人類が大変な長寿であったという記述は世界中の古伝承に共通して見られる要素だが、『竹内文書』においてはその長寿ぶりが並外れている。
 上古二十五代は一代あたり100億年を超える治世であり合計で約3300億年不合(フキアエズ)朝七十三代では一代あたりの治世は短くなったものの、それでも合計で約290万年である。現在の科学において宇宙の年齢が150億年とされていることを考えれば、これはあまりに荒唐無稽な数字である。
 だが、そこに誇張があるとしても、
何らかの史実が含まれているとは考えられないだろうか。それがまったくの想像の産物であったとするなら、世間からもう少し受け入れやすい歴史を捏造したはずである。先述したように、『竹内文書』以外にも神武天皇以前に天皇の系譜が存在していたとする古文献がいくつもあるのだから、その年代や年数は別として、やはり、何らかの形で我々の知らない長大な天皇家の歴史が存在していたと考えておくべきではないだろうか。
 『竹内文書』について、「荒唐無稽とも思える内容が羅列されており、偽書とされるのは仕方がない面もある」としながらも、「何らかの史実が含まれている」と肯定的に捉えようとする浅川様。

 しかし、それを説明する過程で登場する
論理展開が奮っている

 赤字の箇所に注目して欲しい。

 まず、浅川様は、「神官マネトーの『エジプト史』に」綴られている「有史以前の長大な歴史」をエジプト学者たちが無視していることを、「私はそれは間違いだと考えている」と否定の見解を述べる。

 次に、「したがって」という接続詞でつなげて、「神武天皇の登場以前に天神七代や上古二十五代の神々の名が登場することはあり得る話である」という結論を述べる。

 これらの文章の構造を分析すれば、次の通り。

   <根拠> 私は○○を間違いだと考えている
    したがって
   <結論> □□はあり得る話である

 なんじゃそりゃ!(笑)

 要は、
「自分が正しいと思うから、正しいんだ」と言ってるだけである。

 文章を手直ししている内に、たまたま、こういう文章になってしまったと思いたいものだが・・・


 そして、上記にあるように、浅川様は『竹内文書』の内容を真に受けているようであるが、
偽書である。それも、近年、創作されたものである。

 なお、『竹内文書』の偽書っぷりについては、当HPでは何度も説明してきているので、既にご存知の方は以下の説明は読み飛ばして欲しい。

 『竹内文書』は、古代より竹内家に代々伝わってきた古文献とされるものである。

 しかし、その文献では、超古代に天皇が地球を統治していたとしていたり、イエスやモーゼが日本に来て死んだとしたりする荒唐無稽な内容もさることながら、
かなり分かり易い偽書っぷりを披露している。

 例えば、太古の昔に天皇がその子息達に世界各地の統治を任せ、その子息達の名前がそのまま地名になったとされているのだが、その一部をあげれば以下の通りである。
インダウ天竺万山黒人民王 → インド
ヨイロバアダムイブヒ赤人女祖氏 → ヨーロッパ
○アジアシャムバンコクムス白人祖民王 → タイ・バンコク
○アシアアンナムノハノイ青人民王 → ベトナム・ハノイ
ヨハネスブルク青人民王 → 南アフリカ・ヨハネスブルグ
○ヒウケエビロスボストン赤人民王 → アメリカ・ボストン
 『竹内文書』が公開されたのは昭和3年のことだが、当時知りえた地名をもとに皇太子たちの名前を作成したのがチョンバレである。

 また、『竹内文書』の中には、「イスキリス・クリスマスの遺言」というイエス・キリストが残したとされる文書があるのだが、何故か、ファーストネームが「イスキリス」と、「イエス・キリスト」を短縮したようなものであるのに加え、それに「クリスマス」が追加されるというワケの分からなさである。(※『竹内文書』の中では、十字架で死んだのは弟のイスキリであって、イエス本人は日本に来て死んだとされる)
 ちなみに、クリスマスの語源は、「キリストのミサ」を意味する英語の「Christ's Mass」である。

 さらに、『謎解き古代文明』(ASIOS・彩図社・2011年)には、『竹内文書』が偽書である根拠として以下の項目があげられている。項目だけ列挙しておくので、興味のある方は該当書籍を参照願いたい。
『謎解き古代文明』 (ASIOS・彩図社・2011年) P.252-253
・当時は使われていなかった文法や仮名遣いの誤りが多々見られる
・名前を少し変えただけの人物が多数出てくる
・地位を表す位階の記述に誤りがある
・史実と合わない
・違う人物による文書が同じ筆跡になっている

 ほんっと、浅川様は、トンデモ本にまんまと騙されるな。。。





 続いて、浅川様が、日本神話の高天原(たかまがはら)のあった場所を論じているので、それを見て行こう。
<P.30>
高天原(たかまがはら)はどこにあったのか?

 高千穂峡に関連して誰もが関心を抱くのが、「高天原がどこにあったのか?」という謎であろう。
 日本神話における天孫降臨とは、天皇家のルーツとされる天孫族の祖である邇邇芸(ニニギノ)(ミコト)が、日本の国を治める神々の住まう高天原から高千穂へ降臨した出来事を指すわけだが、その
高天原についてはそれが天に存在すると考える「天上説」と、地上界の宮崎か鹿児島の特定地域であるとする「地上説」に分かれて長年論議されてきた。
 「高天原がどこにあったのか?」という謎について、「天上説」「地上説」を説明する浅川様。

 しかし、浅川様の「地上説」の説明が、「地上界の宮崎か鹿児島の特定地域であるとする『地上説』」となっており、これは恐ろしく単純化され、しかも、重要な情報が抜け落ちた説明である。

 浅川様は「地上説」を、「宮崎か鹿児島」に限定してしまっているが、Wikipedia「高天原」を見ても分かる通り、比定地はそれだけではなく、また、日本国内にとどまらず
海外説もある。天孫のニニギが空から日本に天降っていないのなら、当然、海外から来たことも想定されるだろう。

 浅川様が何故、国内のみ、かつ、「宮崎か鹿児島」に限定したのかよく分からないが、学説をからめて説明するんなら、するで、きちんと説明しなよ。。。

 そして、
<P.31-32>
 高天原はいわば神界のような世界だが、そこでは田を耕していたり、機織(はたおり)が行われていたという記述のあるほか、須佐之男(スサノオノ)(ミコト)の乱暴狼藉によって田の畦道(あぜみち)が壊されたり糞尿が撒き散らされたりといった人間界と変わらない様子が描かれており、これを見ると、高天原とは地上にあったと考える方が理にかなっているように思えてくる
 
こうした地上説に則った場合、高天原と天孫降臨の地・高千穂はほとんどイコールで結ばれることになるだろう。ではそれはどの地になるのか?
 高天原が、「人間界と変わらない様子が描かれて」いるので、「高天原とは地上にあったと考える方が理にかなっているように思えてくる」というのは分かる。

 しかし、その後に、「こうした地上説に則った場合、高天原と天孫降臨の地・高千穂はほとんどイコールで結ばれることになるだろう」という結論。

 何故、高天原が地上だったら、「高天原と天孫降臨の地・高千穂はほとんどイコールで結ばれることになる」のか全く説明がなく、
理解不能

 高千穂以外の地上から、高千穂へと移住したことも十分考えられる話なのに、突然、「イコールで結ばれ」てもねぇ。

 論理の飛躍である。





 本書には、浅川様の知り合いの自称霊能者・超能力者が多数登場するのだが、以下の通り、マオリッツオ・カヴァーロ氏もその一人。
<P.101>
 一方、マオリッツオ・カヴァーロ氏は、地球の海底や地下には4次元世界の都市が幾つか造られており、そこには、龍神系の宇宙人やレプティリアン、カッパ族などもいると述べている。現に、彼がクラリオン星人との最初のコンタクトで、連れて行かれたのもそういった海底都市であった。
 
彼はさらに、コンタクトを続けているクラリオン星人から得た情報として、水棲の爬虫類や両生類に近い生物を異星人たちが遺伝子操作したことで人類が創造されたことを伝えている。これもまた、人類の創造に龍蛇族がかかわったことと何か関係しているのかも知れない。
 ここにも記載されている通り、カヴァーロ氏は、クラリオン星人なる宇宙人とコンタクトをしていると称している人物である。

 クラリオン星人の写真が表紙に掲載された彼の書籍が、書店のオカルトコーナーに平積みされていた頃もあったので、目にした方も少なくないのではないかと思う。
<参考> カヴァーロ氏の著書
 
 しかし、このクラリオン星人の写真なるものは、既に偽造であることがバレている

 カヴァーロ氏がこの写真を作成するにあたって使用したのは、オーストラリアのファッションモデルのジェマ・ワード氏の写真(※ただし、ジェマ・ワード氏のみではない)。日本でも明治乳業やコーセー化粧品等のCMに出ていたので、名前を知らなくても顔は見覚えのある人も多いと思う。

 そして、カヴァーロ氏は、ジェマ・ワード氏の写真を画像編集ソフトで加工して、クラリオン星人の写真なるものを作成したのである。

 詳細は、「マオリッツオ・カヴァーロ 詐欺師 捏造」で検索すると画像付で解説されているページもあるので、興味のある方は検索してみて欲しい。

※その他、カヴァーロ氏の主張のデタラメさについては以下の書籍で指摘されているので、興味ある方は参照願いたい。
『謎解き 超常現象V』 「21 惑星クラリオンの歴史」P.184-190

 詐欺師にまんまと騙される浅川様。

 何が、「4次元世界の都市」だ。何が、「龍神系の宇宙人やレプティリアン、カッパ族」だ。






 以上、(その5)にまで渡り長々とツッコんで来たが、はっきり言って、本書はツッコミ出したらキリがないほどのトンデモな本である。

 そもそも、浅川様が自説を作り上げるにあたって前提とした、自称霊能者・超能力者の話やオカルト系の書籍がデタラメ。

 さらに、そこに、(その1)で記載したような、
「光ってるものが宙に浮いていたら、何でもUFOにしてしまう」レベルの思考が加われば、もう何でもアリである。どんなトンデモ結論であろうと導くことが可能になってしまう。

 だからこその、「日本人のルーツは、龍蛇系の宇宙人であることを突き止めてしまった」などと言う、どうしようもない結論なのである。


 それでは最後に、本書の第6章にある文章にツッコミを入れて終わりとしよう。
<P.318>
 宇宙人同士の戦いとか、地底都市の存在とか、地震兵器による人工地震の発生とか、人類の奴隷化計画とかいった言葉を聞くと、誰もが耳を疑い、陰謀論者の戯言だと一蹴してしまいがちである。
 しかし、それらは決して空想物語に登場する題材ではなく、現実的なものである可能性を認識しておかないと、現在起きている出来事やこれから先に発生する天変地異や戦争、暴動、奇っ怪な伝染病などに対する
正しい判断ができなくなってしまう恐れがある
 「陰謀論者の戯言」にまんまと騙され、「正しい判断ができなくなって」いるのは、あなたですよ、浅川様。




2012.12.18 新規

    精神世界
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どうしようもない根拠に基づく、どうしようもない結論。それでいて、自信満々にアカデミズム批判。

ホント、典型的なトンデモ本だったヨ。