インチキ教祖・教団の手口(その3)
※当記事は、(その1)(その2)からの続き


 当記事では、催眠術のように特定の思想・観念等を刷り込む、「断定」「単純明快」「繰り返し」について見て行きたい。



4.断定・単純明快・繰り返し

 大衆を騙し、扇動するのには「断定・単純明快・繰り返し」が基本となり、そこに「もっともらしいだけの根拠」が加味され、時に、国家を揺るがすような大きな運動へと発展することもある。

 もちろん、理性的な人、きちんと物事を考えられる人には通用しないが、圧倒的多数のそうでない人を騙すことが出来るので、数の上では十分な効力を発揮することになる。

 以下では、「断定」「単純明快」「繰り返し」それぞれについて、順に説明して行きたい。



(1).断定

 まずは、次の二つの文章を見て欲しい。
 あくまで二択だとして、AとB、どちらの発言をしている人に教えを請いたいと思うだろうか。
A.なんか私、正神界から転生して来たんじゃないかと言う気がしてるんです。
B.私は正神界から転生して来たのです。
 先入観や偏見なしで素直に選択すれば、多くの人は後者のBを選ぶはずである。
 それは、Bに比べ、Aの方が自信なさげで頼りなさそうな印象を受けるからである。

 
実際は、AとBのどちらがよりマトモかと言えばAである(※あくまで一般論として比較すればの話)。

 正神界の存在など証明できるはずもなく、ましてや、そこから転生して来たことなど証明できるはずもない。
 その、証明できないものを断定的に語っているBは、
「物事を客観的に考えることができない人」と言えるだろう。その人の中でどんなに確信を持っていようが、せいぜい言えて、Aのような発言くらいなのである。

 しかし、AとBでどちらがより多くの信者を集めることが出来るかと言えば、Bとなる。これが「断定」の効力である。


 続いて、次の二つの文章を見て欲しい。
 こちらも、CとD、どちらの発言をしている人に教えを請いたいと思うか考えて欲しい。
C.私の教えに従っていれば、多分、天国に行けるんじゃないかと思います。
D.私の教えに従うこと、それが天国に行ける唯一の方法です。
 こちらも先入観等なしで選べば、後者のDになるはずである。

 Cの方は
「そんな、『多分』とか、曖昧なこと言われてもねぇ・・・」と思い、「その教えを知りたい!」という強い気持ちが起きることはないだろう。

 一方、Dは「断定」な上に、
「唯一の方法」とまで言い切って自信にあふれている。

 こちらの二択も先のものと同じで、
「なんで、証明できないものを、そんな自信満々言い切っちゃえるんだよ〜」という話なのであるが、結果的に、より多くの信者を集めることができるのは「断定」の後者となる。

 このような「断定」とその反対の「推量」には、それぞれ、次のような印象を与える効果を持っていると言える。
「推量」 ・・・ 自信がない     ・・・ 不安
「断定」 ・・・ 自信に溢れている ・・・ 安心

 また、「推量」よりも「断定」が選ばれる理由として、
人の「曖昧な結論を嫌う」という性質も関係している。

 結論は白か黒かはっきりしているものが好まれ、一方、曖昧なグレーな結論だとモヤモヤして居心地が悪く、不安定さを感じてしまうからである。

 例えば、殺人事件の報道があった場合、
「犯人が誰か分からない」という状況を人は無意識に嫌うものである。

  
「犯人はAかも知れないし、Bかも知れない。もしくは、全く別の誰かかも知れない。」

 そのような、結論が不安定な状況を嫌い、
「はっきり、犯人は○○だと判明して欲しい」と思うものなのである。

 だからこそ、ネット上で根拠脆弱な推理を元に無実の人が犯人に仕立て上げられると、
「少なくない人がその結論に飛びついて、その偽犯人に対するバッシングが始まる」などと言うことが起きることになる。


 また、同じように、人は
「理由が分からない」という状況も嫌う。それは、「何故だか分からないが起こる(起こった・ある・あった)」というような曖昧な結論の状態だからだ。

 例えば、地震が発生する原因は、昔の日本では地下にいる大ナマズのせいだとされていた。

  
「いったい、大地を揺るがす程の大ナマズをいったい、誰が見たと言うんだ?」
  「そこまで巨大になるナマズなんて存在しえるのか?」
  「その大ナマズはいったい、何を食べて生きているんだ?」


 ツッコミ出したらキリがないのであるが、その結論に
十分な根拠があるかなんてのはどうでも良いことなのである。むしろ、「ホンマかいな??」と考え出したら、いつまで経っても「理由が分からない」不安定なままになってしまう。

 よって、このような荒唐無稽な話でも「理由が分からない」不安定な状況よりよっぽど良く、人々はその結論を受け入れて安定を手にするのである。(※昔の人とは言え、その全てがこの結論を支持していたわけではない。
「ただ、それっぽい理由があれば、それでいい」という人々が受け入れていたのだ。)


 以上、このように、
不安定さの回避という面からも「断定」は支持されることになり、次のような「断定」をするインチキ霊能者・宗教が多くの信者を集めることが出来ることになるのである。
○私こそが真の救世主です。
○私はアカシックレコードにアクセスすることが可能で、全ての過去と未来が視えるのです。
○間近に迫っているこの世の終末に、選ばれて天の御国へと召される為には、当宗教の信者になることが唯一の手段なのです。
○神から教示された、必ず幸福になれる秘密の方法を開示しましょう。
○教祖こそが、人々を正しい方向へと導ける唯一の存在なのです。
 ただし、インチキ霊能者・宗教のこれらの「断定」は、妄想レベルの過剰な自信の現れに過ぎず、それは、徹底的に都合の悪い事実を無視した結果なのであるが。




 続いて(その4)では、「単純明快」について見て行きたい。



2015.08.25新規

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