論点(その8)
 ※当記事は(その1)(その2)(その3)(その4)(その5)(その6)(その7)からの続き


6.論点が分かっていない人の議論

 「論点」や「論点の重み」が分かっていない人たちというのは、当然ながら、本来の「論点」を無視して意味のない批判をしたり、「論点の重み」の軽い「論点」で批判して否定できた気になったりするものである。

 以降では、「論点」や「論点の重み」が分かっていない人たちというものが、自分が否定したいものと遭遇した時、どのような批判・反論をするのかをパターン分けして見て行きたい。



(1).「論点」が分かってる分かっていない以前の議論

 まずは、「論点」が分かっていない中でも特に酷いケースを見てみたい。

 例えば、次のような<主張>があったとする。
<主張> 6は2で割り切れる整数である。よって、6は偶数である。
 これに対しての<批判>が次のような場合である。
<批判> 6は3でも割り切れるよね。「木を見て森を見ず」とはこのことだね。
 説明するまでもなく、「何を言ってんだよ、お前は??」と言いたくなるような、どうしようもない批判である。

 ある数字を偶数であることを証明する為には、2で割り切れることを述べるだけで十分である。そして、その証明には、3で割り切れるかは関係なく、それについて述べる必要はない。

 しかし、上記<批判>では、3で割り切れることを述べていないことを批判しているのである。

 このような批判をするタイプの人は「論点」もクソもなく、ただ、
文章の中で書かれていないことを必死に探し出し(ここでは、6が3で割り切れること)、それを持ち出すことで批判が成立すると思っているのである。

 少し考えれば、その批判に意味が全くないことが分かりそうな話であるが、それが分からないからこそ、このような批判をした上で、得意げに、「『木を見て森を見ず』とはこのことだね」などと付け加えたりも出来ることになる。

 そして、この<批判>に対して、次のような返答をすると、
6が偶数であることを述べるのに、何故、「6が3で割り切れる」という話が出て来るのですか?
次のような反論が返ってくることになり、
6の約数は2と3であるのに、2についてしか述べないのは片手落ちだと言ってるんですよ!
どこまで行っても会話は成立しない。

 こちらが言っている「6が偶数であることを述べるのに」という条件など一切耳を貸さず、一方的な主張を繰り返すだけである。


 残念ながら、このような批判をしてくる人も世の中にいるもので、実際に管理人は遭遇したことがある。

 
絶望的なほどに考える力がないのだが、このようなタイプに限って、自分のことをすごく賢いと思っている。

 何故なら、上述のように、単に書いてないこと探し出すだけで否定できたと思っているので、どんなに賢い人のどんなに隙のない論証も簡単に否定できてしまうからである。

 そして、否定できていないのに否定できた気になって、
「俺は、世間で賢いと言われている人の論証も簡単に穴を見つけるけることが出来る。俺はなんて賢いんだろう」と自己満足してしまうからだ。


 ちなみに、このようなタイプは、どんな事実も好きなように否定も肯定もできるので(「できた」と思うだけだが)、どんどん現実から離れて妄想レベルへと突入して行き、極端な主義・思想を主張し出したり、「自分は救世主だ」等と主張し出したりすることになる。

 なお、上述のタイプは
「文章に書かれていないことを探し出して、それを持って否定する」というものであったが、他にも私が知っているものでは、以下のようなパターンもある。

  ○
文章や単語によく分からない解釈を加えた上で、否定する

 ここでは解説しないが、以下の記事で大川隆法氏が披露しているのをツッコんでいるので、興味のある方は参照して欲しい。

    記事「『幸福実現党宣言』にツッコミ! ・・・ 大川隆法様




(2).結論だけの議論

 (1)で見たケースは稀に見られるものであるが、こちらのケースは世間でよく見られるものである。例えば、(1)と同じ以下の主張に対して、
<主張> 6は2で割り切れる整数である。よって、6は偶数である。
次のように否定する場合である。
<批判> 6が偶数のはずがないだろ!
 もちろん、結論だけを述べて、切り札である根拠を隠す戦略の場合(*)もあるのだが、問題なのは、結論を主張し続けるだけで、根拠がいつまで経っても出て来ないケースである。
(*)
 例えば、相手がウソをついて自分の言動を否定することを見越した上で、「あなたは○○と言いましたよね!」とだけ言って、相手がした言動を録音・録画していることを黙っている場合。

 そのケースでは、相手に「そんなことは断じて言っていない!」、「ウソをつくな!」等と反論させて泳がすだけ泳がしてから、「ちゃんと、録音(録画)していて証拠もありますよ」と切り札である根拠を示すことになる。

 ちなみに、基本的には、根拠を示した上で結論を述べるべきである。
 上記<批判>では、「論点」は「6が偶数であるか否か」になるのであるが、その前提となる「論点」、つまりは根拠が述べられていない為に、議論しようがない。

 (その1)でも触れたように、「6は偶数である」という結論を否定するには、例えば、次のような根拠を提示して「論点」にすべきである。

   ○6は2で割り切れない         ・・・ <主張>の根拠の部分を否定
   ○2で割り切れるものは偶数でない ・・・ 偶数の定義を否定

 
「6が偶数であるか否か」という「論点」だけの提示では争いようがなく、また、「6が偶数のはずがないだろ!」とだけ言われても納得しようがないからである。

 このような、結論だけの議論をふっかけてくるタイプの人は、結局、「論点」というものが分かっていないからこそ、このようなことが出来るのである。

 相手の主張を否定したいが、自分では何を「論点」にしたらいいのか分からない。だからこそ、結論だけ否定して、否定できた気になって自己満足するのである。

 そして、何故、このような結論だけの議論が世の中で良く見られるかと言うと、
何も考えなくて良くて楽だからである。言い方を変えれば、自分が否定したいという「欲」に基づいて、考えなしに否定しているだけとも言える。


 この、結論だけの議論のパターンは数限りなくあるが、例えば、次のようなものがある。
○あなたは間違っている!
○決まってるだろ!
○そんなことも分からないのか!
○何を言っているのか分からない。
 このように、結論だけ主張していれば、好きなように肯定も否定もできるので非常に楽なのである。

 また、もう少し高度っぽくなると、例えば、次のようなものもある(※あくまで「ぽい」だけだが)。
○あなたの主張には内容がない。
○重箱の隅をつつくような批判だ。
○牽強付会(*)に過ぎない。
○単なる推測を述べているに過ぎない。
○根拠脆弱だ。
○机上の空論だね。
○客観性の欠片もない主張だ。
○結論ありきの主張だ。
○お粗末としか言いようがない主張だ。

(*)「牽強付会」・・・道理に合わないことを無理にこじつけること
 こちらのケースでは、相手の主張内容をちゃんと吟味した上で否定しているように聞こえて、先のものよりは賢そうに見える。ただし、「どう、主張に内容がないのか」等を具体的に指摘できなければ全く意味がない。

 しかし、賢そうには見えるので、考える力のない人は同様のフレーズを多数取り込んで、自分の賢さを偽装し、自己満足しているものである。

 また、上記2つは、基本的にどのような主張に対しても使用できるオールマイティのものであるが、個別のケースにのみに対応したものもある。例えば、次のようなものである。
<応援している政治家等が逮捕されたことを否定したい時>
○国策捜査(*)だ!

<内閣支持率を否定したい時>
○一時的な人気に左右されていては、大局的な視野に基づく政治が出来ない (※内閣支持率を利用したい時は「世論を無視するな!」)

<選挙結果を否定したい時>
○不正選挙だ! (※利用したい時は「民意を無視するな!」)

<アンケート結果を否定したい時>
○このようなアンケートは統計学上意味がない (※実際、意味のないアンケートも多いのだが)

<証拠を提示できない時>
○△△が隠ぺい工作を行ったからだ!

<自分の信仰している教祖や教団について、メディアに否定的な記事が掲載された時>
○△△の陰謀だ!

<予言が外れた時>
○未来は不確定なのです。(未来は白紙なのです。) (※そのくせ、当たった時は「予見していました!」と自慢げにアピールする)


(*)「国策捜査」・・・捜査方針をきめる際に、政治的意図や世論の動向にそって検察が適切な根拠を欠いたまま「まず訴追ありき」という方針で捜査を進めること

 こうやって、それっぽいフレーズだけ覚えておいて、必要に応じて使い分ければ、非常に楽に、否定したいものは否定でき、肯定したいものは肯定できる。

 そして、
「間違いを認めたくない」という「欲」や、「自分が正しいと思っているものを正しいと思っていたい」等という「欲」にしがみ付いて、結果、マイナスの人生を歩み続けるのである。


--- 2014.4.29追記 -----------------------------------------

 結論だけの議論のパターンとしては、他にもオウム返し型がある。以下のように、自分が批判されたことをそのまま相手に言い返すのである。
○間違っているのはお前だろ!
○根拠脆弱なのはお前だろ!
○客観性がないのはお前だろ!
○主張に内容がないのはお前だろ!
 このパターンでは、もはや、そのシチュエーションに合っていそうなフレーズを選ぶ必要もなく、ただ、相手の言ったことをそのまま相手に返せばいいだけ。頭を使う必要が全くなく、非常に楽に相手の発言を否定できた気分になれる。

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 ※(その9)に続く



2014.04.22新規

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