もっともらしいだけの根拠(その14)

 ※当記事は、記事(その9)(その10)(その11)(その12)(その13)からの続き



14.誤った二分法(6) どのような人が「誤った二分法」を使用するか

 最後に、どのような人が「誤った二分法」を使用して他人を特定の説へと誘導することになるのかを見ておきたい。



@.「誤った二分法」を使用した主張をし出す人

 (その12)の嫁姑問題の例で見たように、「誤った二分法」は誰でも使用する可能性のある手法である。

 それは、「自分は正しい」、「自分は悪くない」等と思いたい時、また、他人にそう思わせたい時に、自然と「誤った二分法」が使用されることになるからである。

 より具体的に説明すれば、「自分は正しい」と思いたい時、人はまず、その結論を支持する根拠のみを探す。

 嫁姑問題で、自分が嫁であれば、(その12)のように「相手にあんなことされた、こんなこともされた」と自分が姑から受けた仕打ちだけを思い出して、自分が相手にしてした仕打ちのことなど考えない。

 そして、
「私はこんなにヒドいことをされている。やっぱり、悪いのは姑で私は悪くない」と結論を出して自己満足することになる。

 結果、特定の結論を出す為に、情報を恣意的に取捨選択したこのような思考法は、「誤った二分法」になってしまうのである。
<参考> このような結論ありきの思考方法については、以下の記事にて詳述した。

 ○記事「目の中の梁 〜「欲」によって自らの目を曇らせる人達〜


 さらに、「誤った二分法」で自己欺瞞の結論を出した後は、それだけで飽き足らず、他人にもその結論を支持してもらおうとする。

 そして、自分がその結論を出す為に使用した根拠を他人に提示することになるのだが、当然、これも「誤った二分法」を使用したものになるのである。

 結果、その他人が「誤った二分法」でまんまと誘導されることになり、一方、誘導した本人は、
「他人も『姑が悪い』という結論を出してくれた。やっぱり、悪いのは姑で私は悪くない」と考えて、先の自己満足の結論を補強し、自己欺瞞の度合いを深めることになる。


 もちろん、全ての人が、「自分は正しい」と思いたい時に「誤った二分法」を使用するわけではない。

 客観的に物事を考えられる人は、
「『自分は正しい』と思いたい」という自分のと区別して物事を判断し、情報の取捨選択などしないから「誤った二分法」にはならない。(ただし、事実誤認によって、結果、「誤った二分法」になってしまうケースもありえるが)

 一方、
欲に捕らわれ、その欲に従って物事を歪めて考える人が率先して、「誤った二分法」を使用することになるのである。

 欲に捕らわれている人は、欲に捕らわれているからこそ、次のように情報を歪めて捉える。
○都合の良い情報のみを見る(都合の悪い情報は無視する)<情報の隠ぺい>

○都合の良い情報は過大に歪めて捉えたり、都合の悪い情報はより過小に歪めて捉える<情報の歪曲>

○時に、都合の良い情報を創り上げる<情報の捏造>
 そして、そのように操作した情報によって、自分に都合の良い結論へと自分と他人を誘導するのである。


A.「誤った二分法」で誘導された説を他に布教し出す人

 上述の通り、まず、欲の捕らわれた人が「誤った二分法」が使用して誤った結論を主張し出すと、次にその結論にまんまと誘導される人が出て来る。

 その誘導された人は、多少主張を補強することはあっても、基本的に、その「誤った二分法」を使用されたままの論理で、さらに他人に主張し出すことになる。

 何故なら、誘導された人は、
「自分がその結論を出すように誘導されただけ」とは気付いておらず、また、その論理が正しいと思ったからこそ同意したからである。

 結果、一人が始めた、「誤った二分法」が使用された主張を支持する人はどんどん増殖して行くことになる。

 もちろん、他からの批判を知り、誘導された説が誤りであることに気づく人もいる。

 一方で、誘導された人たちの中でも、に捕らわれた人が、
「『自分の判断は正しい』と思いたい」というに従って行動し、他からの批判を無視したり、過小評価して、自分の判断に固執し続けることなるのである。


 ちなみに、(その11)で説明した9.11同時多発テロの自作自演説のような数々の陰謀論も同様の仕組みで広まったものであり、特に、欲に捕らわれ、物事をその欲で歪めてしか捉えられない人が、自分が正しいと思った陰謀論をいつまでも主張し続けることになる。





 以上、「誤った二分法」について解説して来たが、これまで述べて来た通り、この手法は、宗教やオカルト関連だけでなく、世間で頻繁に使用されているものである。

 その理由は、「誤った二分法」は、他人を特定の説を支持するよう誘導するのに最適で、かつ、簡単な手法であるからであり、また、欲に捕らわれ、その欲に従って物事を歪めて考える人が、自然とその手法を使用することになるからである。

 よって、このような手法があることを知り、(その13)で述べたような対策を頭に入れておくことは有意義なことであろう。


 ちなみに、ある団体・組織の人々が、その団体等の目的とは無関係の事柄で、統一された主義・主張を持っていることを不思議に思ったことはないだろうか。

 そして、そのような団体等では、世間全体から見れば少数派の意見に統一されていることも少なくないのだが、通常、そのような少数派の意見で綺麗にまとまることなどありえないだろう。

 また、そのようなケースでは、自分達の意見に異常に固執し、それに反する意見を激しく攻撃することも多い。

 
そのような団体等では、「誤った二分法」を使用して同じ結論を出すよう誘導していると考えて、まず間違いない。(おそらくは、それ以外にも、マインド・コントロールの手法等が使われているはずである)

 そして、(その9)等でも述べた通り、実際は誘導されて出した結論にも関わらず、
「自分で考えて出した結論だ」と思うことになるので、その結論に執着することになり、結果、その執着に基づいて、反対する意見を激しく攻撃し出すようになるのである。


 また、本件に関わる記事では、情報操作(隠ぺい・歪曲・捏造)について特に力を入れて解説するようにした。

 その理由は、
情報操作をしているか否かは、その人や団体の誠実さ・真正さを図る上で良い試金石になるからである。

 情報操作をするような人や団体は当然、
不誠実であるし、また、本当に自分の主張が正しいものであるのなら情報操作する必要もない。

 例えば、(その12)でも少し触れたが、インチキ霊能者、インチキ宗教には情報操作がつきものである。それは、
インチキであるからこそ、情報操作をする必要が生じ、また、そうしなければ、偽モノであることがバレてしまうからである。


 情報操作はこれまで見て来た通り、欲に捕らわれた人がするものである。そして、彼らは、自分の欲の為、つまりは、自分の為にしているからこそ情報操作をして、他人が正しく判断するのを妨げているのである。

 よって、情報操作をしていることが分かった時点で、如何に、「世の為」、「人の為」などと大そうな大義名分を掲げていても、それはウソであると断じて間違いない

 彼らは、一時的に、もしくは、上辺だけで、そのような「世の為」、「人の為」という大義名分に従って行動することはあっても、自分のとそのような大義名分を天秤にかけた場合、最終的には必ず、自分のを選ぶことになる。

 例えば、霊能者が誤った霊視結果をした場合、次のような選択を迫られることになる。
<本当に「人の為」に行動しているのなら、とるべき行動>
「信者たちが自分の能力について誤った認識をしないよう、情報は正確に、かつ、隠さずに伝えるべき」
  → 誤った霊視結果を、隠ぺいすることなく堂々と公表。


<自分の欲に従った場合の行動>
「自分の霊能力がインチキ、もしくは、あてにならないものであることを信者たちにバレたくない」
  → 誤った霊視結果を書籍やブログ等から削除して無かったことにする。(情報の隠ぺい)
 
 このような二つを天秤にかけて、インチキ霊能者が選ぶ行動が情報操作なのである。


 また、そのようなインチキ霊能者、インチキ宗教の信者たちも結局は、「同じ穴のムジナ」である。彼らの場合、
「自分が信じている霊能者が、宗教が本モノであると思っていたい」というに捕らわれ、その教祖たちと同じように自分自身が取得する情報を操作する。

 例えば、次のようにである。
○教祖の教えに従って、良い事が起きたという情報のみに目を向け、悪い事が起きたという情報は無視する。<情報の隠ぺい>

○他の信者であるAさんもBさんも、「教祖様はすばらしい」と言っているという情報のみに目を向け、「この教祖、やってることおかしいじゃん!」と言って辞めて行った元信者Bさんの存在からは目を背ける。<情報の隠ぺい>

○漠然とした予言が当たっただけにも関わらず、さも、全てを見通している霊能者の如く大げさに捉える。<情報の歪曲>

○圧倒的に数の多い、外れた予言には目を向けない<情報の隠ぺい>
 このような情報操作は、先に述べた嫁姑問題での思考方法の例と全く同じものである。

 結局のところ、客観的に考えることを身につけようともせず、欲に捕らわれて自己欺瞞の思考方法で生きてきた人が、インチキ宗教にハマると、どんどん深みにハマって行くことになるのである。




2013.7.9新規

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