主観と客観(その5)
※当記事は(その1)(その2)(その3)(その4)からの続き。

6.客観を装った主観での考え方(偽客観)

 世の中、客観性が要求される職業、例えば、学者、ジャーナリスト、評論家等で、
「オマエ、客観的に考えるつもりねーだろ」という人が多々いるのはご存知の通りだ。

 特に、
「客観性がない学者」など、もはや学者としての必須、かつ、最低限の要件を満たしていないのだが、そういう人でも、名誉教授という肩書を与えられていたりして笑うに笑えぬ状況である。

 そのような人たちは、「偽客観(にせきゃっかん)で物事を考えている。

 「偽客観」とは、私が作った造語で、
本当は主観で考えているにも係らず、客観を偽装した考え方のこと
であり、それを使って自分を騙し、そして他人を騙しているのである。

 (その3)の「4.完全主観の根底にあるもの」で、「完全主観」の次の三つの要件を記載したが、「偽客観」の場合、このいずれか、もしくは、全てに反することになる。
A.根拠の真実性
B.根拠と結論の結び付き
C.根拠と結論のバランス
 つまり、「偽客観」は次のような特徴の持つことになるのだ。
A.根拠の真実性
B.根拠と結論の結び付き
が弱い、無い
C.根拠と結論のバランス
の悪さ
 もし、客観的に考えるなら自分のを実現することが出来ない。よって、この三つのどれか一つ以上を使用して客観を捨て、自分のを達成しようとするのである。


 これら三つの「偽客観」の特徴を順に、より詳細に見て行こう。


(1).根拠の非真実性

 以下は、(その4)で使用した違法駐輪の話の続きである。
 違法駐輪を注意されたことでムシャクシャが治まらないAさん。

 昼食時、同僚たちに次のように話した。

「今朝さ、駅前に自転車停めようとしたらさ、いきなり、後ろから『そんなとこに停めるな!』って怒鳴られたの。

 振り返ったら、すっげぇ、鬼のような形相したリーマンのオッサンが居てさ。別に、そこに停めたって、広いし全然邪魔になんないんだよ。他にもいっぱい停めてたし。

 ホント、いったい、何様って感じ?
 ま、朝から、こんなオッサンの相手したくないから、とっとと離れて別のトコに停めたけどね。

 でも、マジむかつく。お陰で遅刻したし。
 アイツ、絶対、頭おかしいヤツだよ。」

 もし、自分が、この話を聞かされた同僚だったとしたら、おそらく多くの人が特に深く考えずに、「ありのままの出来事」、つまりは、客観的な事実を伝えられていると思い、この話を信じるだろう。
 実際は、お分かりの通り、かなり歪められた情報である。

 そして、そのように歪められた理由は、Aさんが朝の出来事を話した目的が、
○ムシャクシャを解消したい
という主観、つまりはに基づくものであり、そのを実現する為に、
○おじさんを限りなく悪く、かつ、自分を限りなく善くして伝えなければならなかった
からである。

 逆に客観的なありのままの事実を話すと、
「違法駐輪しようとしたオマエが悪い」と言われて、自分のを実現出来なくなる可能性が高い。

 そのようにして歪められ結果が、Aさんが話した上述の内容であり、より詳細に分析すると、次のように情報操作が行われている。
<隠蔽>

  ・・・ 自分に関するマイナスの情報は伝えない

○そもそも、自分が寝坊したことが遅刻の根本原因
○違法駐輪しようとしたこと
○注意されて謝ったこと(注1)
○結局、駐輪場に停めたこと(注1)


(注1)違法駐輪を隠蔽したので、必然的に隠蔽することになる。
<歪曲>

   ・・・ 自分に関するプラスの情報は過大に、マイナスの情報は過小に。
      おじさんに関するプラスの情報は過小に、マイナスの情報は過大に。

「そこに停めたって、広いし全然邪魔になんないんだよ」(過大) ← 実際は、違法駐輪がある為に、人がすれ違える程度の広さ(注2)

「怒鳴られたの」「すっげぇ、鬼のような形相したオッサン」(過大) ← 実際は、怒鳴られたわけではないし、少し険しい顔はしていたが「鬼のような形相」だったわけでもない。(注2)


(注2)(その4)で記載した文章からは読み取れないが、ご容赦。
<捏造>

   ・・・ 自分に都合の悪い事実は、創り上げた別の情報で置き換える。

「そんなとこに停めるな!」 ← 本当は、「あなた、ここは駐輪禁止ですよ!」と言われた。ありのまま伝えると、「違法駐輪しようとした」という事実がバレてしまう。

「朝から、こんなオッサンの相手したくないから、とっとと離れて」 ← 本当は、違法駐輪をしようとした自分が悪いのが分かっていたから。また、自分が冷静に対処したように見せかけている。

○遅刻した原因を全ておじさんのせいに。


「歪曲」「捏造」の線引きは曖昧である。上記は基本的に実際にあった事実をもとにしているので、「全くのウソ」とも言い切れないし、「歪曲」に分類しても良い。
 このように、Aさんが同僚に伝えた話は、一見、客観的な事実が伝えられているかのように見せかけて、実は操作された情報なのである。

 そして、先述の通り、その根底にあるのは主観であり、同僚たちを
「自分は悪くなく、おじさんが悪い」という結論に誘導する為の根拠として、上記のような隠蔽・歪曲・捏造を使用した情報を提供しているのである。

 本来は正しい事実を伝えるべきものを「偽客観」で考えて話しているから、「完全主観」の要件から外れて「根拠の非真実性」という特徴を持つことになると言える。

○都合の悪い情報は伝えない
○都合の良いように大げさに歪めて話す
○時に、ウソの情報を追加する
 このような、Aさんと同様の行動は誰にでもあることであると思う。

 そして、Aさんのケースでは、歪められた情報で悪モノにされたのは見ず知らずの他人であって実質的な被害を被ることはないだろうし、この話を信じた同僚たちにも実害はないだろう。よって、
「まあ、許容してもいいのでは」というものであると思う。

 ただし、世間では、同じ手法によって悪モノにされるのが、
「見ず知らずの他人」ではなく、会社の同僚、友人、知り合い等の場合も多い。

 自分のに従って情報を操作し、全く悪くない他人を悪モノに、また、過剰に悪モノにし、周りの人を騙して対象に被害を及ぼす。

 それは、許すべからざることである。

 しかし、
世の中、主観客観の区別がついていない人がほとんどなので、半ば無意識に、このような情報操作が当たり前のように行われている

 よって、
対立している片方のみから話を聞く時は、決して鵜呑みにしたりせず、隠蔽・歪曲・捏造を想定して聞くべきなのである




 以上、続いて(その6)では、残り二つの「偽客観」の特徴について見て行きたい。



2016.12.13新規

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