インチキ教祖・教団の手口(その7)
※当記事は、(その1)(その2)(その3)(その4)(その5)(その6)からの続き


 当記事でも(その6)に引き続き、断定・単純明快・繰り返しをより効果的に実施する為になされる手段を見て行きたい。




5.断定・単純明快・繰り返しの関連手法

(3).三つ子の魂百まで

 宗教団体が遅かれ早かれ目を付けるのが、信者の子供である。
 その理由は以下の通り、主に2つある。
@.真っ白な所に刷り込みできる
A.家族単位での囲い込みをすれば、組織の永続が可能となる
 まず、@だが、「断定・単純明快・繰り返し」で刷り込みするには、当然、既に色が付いている所より、真っ白な所に色を塗り込んだ方が、容易に意図する色へと染めることが出来る。

 つまり、大人より子供の方が、教団の好きなように、特定の概念や思考法を植え付けることが可能であり、また、子供時代から刷り込みをした方がその影響力は強力なものとなる。

 子供時代にカルトによって刷り込みがなされた場合、どのような影響を及ぼすことになるのか。そのことを知ることの出来る体験談を見てみよう。

 以下の内容は、書籍『「救い」の正体。』に記載されているもので、告白者はエホバの証人の二世信者だった人である。
 少し長いが参考になると考え、引用する。
『「救い」の正体。』 (別冊宝島編集部(編)/宝島社/2008) P.246-248
どうしても子どもを叩いてしまう

 最初に、あるエホバの証人二世の証言と、日本弁護士連合会(日弁連)がヤマギシ会に送った「勧告書」をもとに、対談の前提となる児童虐待について報告しておく。
 
高校卒業と同時に組織から離れ、それ以降エホバの証人には嫌悪感すら覚えていた。それなのに、子どもが生まれると、自分が親からされていたように、どうしても子どもを叩いてしまう。そんな彼女の話は衝撃的だった。
 「かわいい子どもに手は出したくないけど、つい手が出てしまうんです」
 整った顔立ちが歪み、眉間に皺を寄せ、苦しそうに語る姿は痛々しかった。
                         *
 
母がバプテスマ(洗礼の一形式)を受け「エホバの証人」(以下エホバ)になったのは、私が四歳のときでした。父はエホバに反対で、よく夫婦喧嘩をしていた。でも、私が小学校にあがるときには父も諦めたみたい。
 エホバの活動は週に三回開かれる地域単位の集会に参加することと、家々を伝道訪問するのが基本です。集会に参加する前には、家で聖書研究の予習も行います。
 
エホバの教えは簡単で、今はエホバ神とサタンが戦っており、近いうちに人類は滅亡する。唯一生き残れるのは信者のみ。そのために聖書を研究しながら、ひとりでも多くの人たちをエホバの証人にしようと家々を回る。その一方、この世はエホバとサタンで二分されているという二元論ですから、サタン的なことはすべて禁じられていた。クリスマスはダメ、焼香はダメ、雛祭りはダメと、禁止事項はメチャメチャ多い。戒律に背いたり、組織の活動をさぼったりすると、母から体罰を受けた。うちの家だけではありません。
 「子どもを懲らしめることを差し控えてはならない。むちで打っても、彼は死ぬことはない」
 この
聖書の言葉を実践し、子どもをムチで打つことをエホバは奨励していました。
 子どもだから
夜の集会は眠いですよね。うとうとすると、家に戻ってムチでやられる弟と喧嘩すると「争いはエホバは好まない!」って、ムチ。ムチはうちでは素手かモノサシ、あとはベルトでした。それでお尻を思いっきりやられる。母は怒り始めたらものすごくて、本当に怖かったですよ。思いっきり殴られると、大声で泣く。ところが、泣くと反省していないって、またやられる。それで、泣くときはいつも唇を噛んで耐え忍んだものです。

 〜(中略)〜

 
エホバでは、この世の交わりはなるべく避けたほうがいいとされていましたから、母は自分が家にいないときは外出を許しませんでした。友達も、母がOKを出した例外的な子ども以外は、家に上げることができなかった。テレビはNHKと漫画のサザエさんだけ。「母を訪ねて三千里」なんてのが日曜劇場であると、それは許された。

 〜(中略)〜


ハルマゲドンの後遺症

 私の子ども時代はともかく母の言いなりでした。母の怒りは恐怖そのものでしたから。伝導訪問にもよく一緒に行かされました。恐ろしかったのは、母の怒りだけでなく、ハルマゲドンの教えもあった。母に「いつ滅亡するの?」って聞くと、いつも「もう少し」とか、「もう近い」と答えていました。毎日のようにこの世の終わりの話を聞かされると、友達はすべて滅ぼされる。どうせ滅亡するんだからと、子どものときから人生は投げやりでした。中学時代に部活に参加しなかったのは、母がいい顔をしなかったこともあるけど、どうせ地球は・・・・・・という諦めがあったからだと思う。


(※管理人注)「子どもを懲らしめることを差し控えてはならない。むちで打っても、彼は死ぬことはない」は、旧約聖書の箴言23章13節の言葉。
 この説明にあるように、告白者は、母親がエホバの証人に入信した為、四歳のときから集会に参加させられたり、伝導訪問に帯同させられたりして影響を受けるようになる。

 そして、「近いうちに人類は滅亡する。唯一生き残れるのは信者のみ」という「ハルマゲドンの教え」を繰り返し聞かされることになり、刷り込みがなされることになる。

 また、「子どもをムチで打つことをエホバは奨励」していた為、教義に反した行為をすると母親から体罰を受けていたようである。

 ただし、子どもであっても他の家庭との比較が可能であるから、積極的に体罰をしたり、他の子どもが楽しんでいるクリスマス等の行事を否定したり等する母親はおかしいと徐々に思い始めることになる。

 そして、告白者は自立してからエホバを脱退することになるのだが、続きは以下の通りである。
『「救い」の正体。』 (別冊宝島編集部(編)/宝島社/2008) P.249-251 (※上記からの続き)

 母親から離れたいという気持ちがあって、高校を卒業すると遠くの看護学校に入りました。自分で生活するようになってから、ようやっとエホバから離れました。二十四歳のときに結婚しましたが、母は教会での結婚式には列席せず、披露宴に参加しただけ、しかも乾杯の輪には加わらなかった。
 子どもができたときには、ものすごく可愛いと思いました。自分で言うのもなんですが、とても可愛がりました。ところが・・・・・・。一歳になった頃から・・・・・・子どもを叩くようになったんです。最初は軽く叩いていました。それがだんだんひどくなって・・・・・・。
 私がおかしくなると、夫が止めてくれるんです。なぜ子どもを殴ってはいけないか、夫はやさしく説明してくれる。それは理解できるんだけど・・・・・・またやってしまう。子どもが五歳ぐらいになってからようやくおさまりました。どんなときに? うーん、覚えていませんねえ。たいした理由ではなかったと思います(記憶が飛んでいる)。
 今でもハルマゲドンの後遺症は残っています。二番目の子どもをつくろうとしないのも、もし滅びが来たらという恐怖があるからです。そんなものは来ないとわかっているんですが、どうしても恐怖感を拭い去ることができないんです。
 その
一方で、ハルマゲドンに早く来てほしいという矛盾した気持ちもあります。だって、もし組織がいうハルマゲドンの預言が嘘だったら、すべてを犠牲にしてきた私の人生は何だったのかと絶望的になってしまうじゃないですが。エホバを去ってから十五年。それなのに、いまだに精神が不安定になることがあります。
 すぐ下の弟は小五の頃から猛然と母親に反発するようになって、母に暴力を振るうようになった。三つ下の弟は比較的おとなしい性格で母親に従っていた。しかし、ストレートで岡山大学に入学し卒業したのに、今は整備士をやっている。「この世はもうじき終わる、もうじきだ」と繰り返されていれば、卒業後の人生設計をすることなんてできませんよね。決して整備士がどうとかというのではありません。人とのつきあいがまるでできなくなったために、車を相手にするようになったんだと思います。
 妹は中学時代からグレ始め、高校を中退し、今は同棲しながらプーをやっている。母への反発、そして未来はないと聞かされ続けてきたから、人生が投げやりになっているようです。
 今年の正月、実家に戻ったとき、「お母さん、何歳になったらハルマゲドンが来るの? もう来る、もう来ると言いながら、私はあのときのお母さんの歳(母がエホバの証人になったとき)を、もう超えてしまったのよ」って問い詰めたら、「お前、背教者の本を読んだね」と怒りだした。それで、大喧嘩が始まった。


※管理人注:文字に色を付けたのは管理人
 このように脱退してからも、告白者は「ハルマゲドンの後遺症」に悩まされることになる。

 「そんなものは来ないとわかっていても、どうしても恐怖感を拭い去ることができ」ず、二番目の子どもを作ろうという気がおきない。

 そして、他の兄弟たちも同様に、「未来はないと聞かされ続けてきたから、人生が投げやり」になっているようである。

 結局、エホバの証人を脱退し、その
教えを頭では否定していても、幼い頃から刷り込まれた概念は強力で、拭い去ることは非常に困難なのである。


 また、エホバの証人の教えに基づき、母親から虐待を受けて来た告白者は、自分が母親になった時に、同じように虐待を始めてしまう。

 宗教とは関連なしに、このような事例は良くあることであるが、告白者の場合、エホバの証人の教えの刷り込みも少なからず影響を与えていたことだろう。


 ちなみに、告白者が「一方で、ハルマゲドンに早く来てほしいという矛盾した気持ちもあります」とも語っているが、実際のところ、ハルマゲドンを一番、待ち望んでいるのは母親である。

 エホバの証人に入信したことにより、夫には愛想を尽かされ、一方、子供たちに体罰までして導いたつもりが、グレて不良になり、そうでなくても、刷り込まれた教えによって投げやりな人生を送ることになってしまっている。

 
この母親にとっては、エホバの証人を否定することは、これらの罪を全て認めることなのだ。家庭を崩壊へと導き、子供たちの人生に非常な悪影響を与えてしまった罪を。

 
そんな大きな罪は当然、認めて受け入れることなど出来ない。だから、いつまでも、エホバの証人にしがみ付いているしかないのである。

 そして、
待ち望むのはこの世の終わりであり、ハルマゲドンである。

 ハルマゲドンさえ起きて、教え通りに信者のみが救われれば、一発逆転。自分が今までして来たことが正しかったことが、そして、悪いのは、エホバの証人を認めなかった夫であり、大人になって脱退した子供たちであることが証明されるのだ。

 もちろん、そんな未来など訪れることはないのだが。

(注)ことわざ「三つ子の魂百まで」の本来の意味

 「三つ子の魂百まで」の意味は「幼い頃の性格は、年をとっても変わらないということ」で、性格について言ったものであり、本来、幼い頃に習ったり覚えたりしたことには用いない。(※参考:故事ことわざ辞典「三つ子の魂百まで」)

 私も勘違いしていたのだが、字義的にはぴったり当てはまるので、このまま節の題として使わせていただいた。





 以上、長くなったのでここで一旦切って、続きは(その8)にて。



2015.09.22新規

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