主観と客観(その10)
※当記事は(その1)(その2)(その3)(その4)(その5)(その6)(その7)(その8)(その9)からの続き。

8.主観は先天的、客観は後天的

(1).客観は後天的で取り入れて行くべきもの

 (その3)で次のように記載した。
主観的な考えの根底にあるのは、「自分の欲や都合、感じ方(フィーリング)で考えること」
 そして、「欲や都合、感じ方(フィーリング)」をさらに突き詰めれば、そこにあるのは「快・不快」である。

 「感じ方(フィーリング)」はまさに「快・不快」であり、都合も以下の通り、やはり根底にあるのは「快・不快」であると言える。
○自分の誤りを認めること(=不快) → 認めたくない(=
○A案が採用されれば、自分が儲かる(=)ことになるので都合がいい。

 この「快・不快」というのは我々が生まれた時点で持っている先天的なもので、動物的・本能的なものである。

 そして、
生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の「快・不快」しかない
○お腹がすいた(=不快) → 泣く
○オムツが濡れて気持ち悪い(=不快) → 泣く
○「いないいないばあ」をされて愉快(=) → 笑う

 よって、赤ちゃんは、「今日、お母さんの具合が悪そうだから、少し、泣くのを控えよう」なんて考えたりしない。自分の「快・不快」しかなく(=主観)、状況を判断したり、他人の立場になって考えたりすること(=客観)がないからである。

 また、
「泣いてばかりいて恥ずかしい」なんてことを考えることもない。やはり、客観がないからである。

 しかし、成長するに従い、自分以外の他者の存在を認識するようになり、徐々に客観を取り入れて行くようになる。

 それは、経験によって、「こういう行動をすれば、このような結果が訪れる」等と学ぶ場合もあるし、他人(本等も含む)から教えられる場合もある。

 通常、そうやって、様々な客観を取り入れて大人になって行くものだが、そもそも、取り入れていない客観は、いくら考えても答えは出せない。

 例えば、突然、アンドロメダ星雲の宇宙人が
「明日、あなたの家に遊びに行く」と通知して来たとしよう。この宇宙人について分かっているのは、アンドロメダ星雲出身ということだけだ。

 さて、この宇宙人をどうやって、もてなせばいいのだろうか。それが分かる地球人は誰もいない。この宇宙人が何をされれば喜ぶのか、また、何をされたら怒るのか誰にも分からない。

 何故なら、この宇宙人の考え方や感じ方、そして、
「どうすれば、もてなすことになるのか」という客観を、誰も取り入れていないからである。

 この例は極端な例だが、会社では、新入社員が既存社員から
「宇宙人」と称されることもよくあることだ。

 それは、その新入社員が
「社会人としての常識」「その会社での常識」という客観を取り入れていない為、それらを既に取り入れて、ごく当たり前のものとしている人たちからは、その言動が奇異に映ってしまうからなのである。


(2).「客観を取り入れる人」と「偽客観を取り入れる人」

 先述のように、
主観は先天的なものであるのに対して、客観は後天的なものである。よって、客観は取り入れて行かなければ身に付かない。

 しかし、人は大き分けてく2つに分かれる。「客観を取り入れる人」とそうでない人である。

 「客観を取り入れる人」は、常識的な人、信頼できる人、誠実な人、一本筋の通った人となる。客観的に考えるべき所で客観的に考え、客観的に行動することになるからだ。

 一方、客観
を取り入れない人は、客観を取り入れたフリをして偽客観を取り入れ、「偽客観を取り入れる人」となる。

 一応、知識としては客観を取り入れるのは取り入れるのだが、自分のがからむ状況では、偽客観で考え行動するようになる。

 何故、そのようなことをするか。

 それは、客観で考え行動してしまえば、自分のの追求が阻害されることが多くなる。
 一方、客観を取り入れないだけならば、自分のを正当化できないし、を実現する為に他人を説得することも出来ない。他を顧みず、自己中心的に、かつ、動物的に自己のを追求するだけの非常識な人間になってしまう。
○自分のを追求したい
○自分が客観的に考えることの出来る常識的な人間だと思いたい

 この相反するの両方を実現することができるのが、偽客観を取り入れることなのだ。

 本来、客観で考えるならば引っ込めるべきを、偽客観を使いもっともらしく正当化して、そのの実現を正しいものとしてしまう。

 そうすれば、そのの実現は
「客観的に考えて行動した結果」だと思い込む事ができ、かつ、大手を振って他人にも強要できる。

 
偽客観とは、自己の欲を正当化する為に自分と他人を騙す為の詭弁だと言っていいだろう。




 ※(その11)では、「偽客観を取り入れる人」、偽客観をどのようにして取り入れて行くか、そして、取り入れた結果、どのような特徴を持つようになるかを見て行きたい。


2017.01.24新規

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